妄想lv-yesロワ






「これから貴方達には殺しあってもらいます」
店長・佐藤美奈子の一言により、店内は騒然となる。
「じょ、冗談ですよね……?」
グッチのバックは店長へと言葉を放つが、内心それは冗談で無いとも分かっていた。
これまで店長は一度も冗談など言った事が無い。
なのに、今こんな性質の悪い冗談など言うはずが無い。
それは他の商品達にも分かっていたのだろう。
ブルガリの腕時計もエルメスの財布も、みんな絶望の表情で店長を見上げている。
「なんでですか! なんで俺たちが殺しあわなくちゃいけないんですか!」
「そうよ、私なんてまだ発売されたばかりなのに!」
グッチの2009春夏新作の言葉にヴィトンの2009春夏新作も同意する。
だが、他の商品達が声を上げる事はない。
所詮彼らは一商品。
店長の言葉に逆らうことは何の意味も無いのだ。
しかし新人である彼らには、そんな事理解できていなかった。
(やめろお前ら、ここで逆らったら……)
グッチのバックは可愛い後輩を止めようと思うも声が出ない。
動きたくてもピクリとさえ動く事ができない。
それはこれから起こる事を予感していたからなのだろう。
殺し合いが本気で、現実であることを。

「問答、無用です」
店長がその一言を発すると同時に爆散するグッチ新作とヴィトン新作。
あまりにも突然で呆気ない彼らの幕切れに、商品達は皆一様に言葉を失っていた。
「貴方達の体内に爆弾を仕掛けさせていただきました。
 私に歯向かったり、一定期間誰も死なないようならその爆弾は爆発します」
爆弾―――その言葉に彼らは漸く体内の異物に気がついた。
いつもなら丸めた紙が詰められている体内に一つの異物が入っていることに。
腕時計達も秒針の代わりに爆弾らしきものが入れられている。
これで逃げ回るという逃げ道すら塞がれてしまった。
「生き残れるのは、ただ一個です」



【2009春夏新作@グッチ 死亡】
【2009春夏新作@ルイヴィトン 死亡】
【在庫―――個】




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