妄想1レスロワ5
「ほああ!!!??」
思わず声を上げてしまった。
無理もないだろう。
――ゼロの仮面を被った何かが突然目の前に現れたのだから。
「……その顔ヘンだぞ」
その仮面を被った何かはこちらを奇特なものと認識したのか馬鹿にしたような口調で話している。
屈辱だった。
しかし相手のペースに巻き込まれる訳にはいかない。
なんとしてもギアスが通用する状態にして駒にしなければ。
ルルーシュは慎重に言葉を出した。
「お前は何者だ?」
名簿の名前は大体覚えている。
問題は未だに顔が確認出来ないことだが――
「ヒーホー! オイラは魔獣ケットシーだホー!」
……何だこのテンションの高さは。
いや、とにかく名前は聞けた。
確かに名簿にあった名前だ。
しかし――こいつはそもそも人間なのか?
一見紺色の着ぐるみを着ているようにも見えるが、尻尾が独立して動いているのだ。
流石に人間以外の相手にギアスを使ったことは無い。
もし、もしもギアスが効かない相手だったら?
――いや、試す前から諦めてどうする。
「顔を見せてくれないか? もし、この殺し合いに乗っていないと言うなら」
ルルーシュがそう言うと、ケットシーは頷いて仮面に手をかけた。
落ち着け。何が出ても冷静に対処するしかないんだ。
だから早くその仮面を――
――。
現れたのは、猫の顔だった。
ルルーシュは固まった。
――なんだと?
とても作り物には見えなかった。
明らかに常識を超えた存在がルルーシュの目の前に居る。
いや、だからなんだと言うのだ。
とにかくギアスを発動しなければいけない。
今すぐにでも――
「オイラはアンタの奴隷よ……ポッ」
そう言いながらケットシーが擦り寄って来た。
――は?
ルルーシュは一瞬呆気に取られ――しかし、すぐに警戒体制に入った。
有り得ない。
これは明らかに普通の思考ではない。
それとも、芝居か?
身を引いて、ルルーシュはケットシーから素早く離れようとした。
瞬間、何かが大きく弾ける音がするとケットシーの頭の左半分が吹き飛んだ。
「!?」
同時に自分の左肩にも唐突に強烈な痛みが出現し、しかしそれよりも倒れたケットシーの先に居る黒い影に神経が回った。
――狙撃されたのだ!
その影の中心から突如火炎が伸び、また銃声が響いた。
ルルーシュの意識は、そこで永遠に途切れた。
「……」
男、桐山和雄は手に持った黒光りする巨大な銃――ジャッカルを腰にしまうと、ルルーシュが持っていたソードカトラスを回収した。
血溜まりを広げ始めた二つの死体には、目もくれなかった。
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