妄想1レスロワ4






ルルーシュの見上げる蒼穹に、赤い、紅い光が灯る。
その光は見る間に大きくなり、こちらを――ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアを照準していた。
王を守護する剣たるペルソナ使い、錬金術師、仮面ライダー。
彼らはルルーシュを守るために散り、あるいはギアスに抗って自ら命を絶った。今や盤面には王、唯一人。
チェックメイト――乾いた笑いが漏れる。
時間がひどくゆっくりと流れているような気がする。

(スザク……俺も、お前と同じところに行けるのかな?)

もはや抵抗する気もない。そう、ルルーシュは負けたのだ。
今や太陽と見紛うばかりにまばゆく輝いたそれ――複合ペルソナが、遂にその極光を解き放つ。
悄然と、ルルーシュは迫りくる死を受け入れた。
轟音――まるで、何かが何かと激しく衝突しているような。

「何してんだ、テメェ」

光がルルーシュを灼き尽くすその刹那、飛び込んできた影が一つ。
上条当麻――ギアスによって支配下に置き、そして自力でギアスを打ち破った幻想殺しの少年。
高々と掲げられたその右手が、まるでケーキナイフのように灼熱の奔流を切り裂いている。

「何、諦めてんだよ……何で、生きようとしねえんだよ! てめぇがここまで来たのは理由があるんだろう!?」

利用し、踏みつけ、切り捨てた。その少年が、こともあろうにルルーシュを守っている。
訳が分からず、ルルーシュは問いかける。何故、俺を助ける――と。

「てめぇはずっと待ってたんだろ!? ナナリーが笑って暮らせる、誰からも逃げ続ける生活を送らないで済む……。
 そんな誰もが笑って、誰もが望む最高な優しい世界ってやつを」

上条当麻。助けを求める声があるのならどこにだって駆け付ける男は、ルルーシュの問いに答えない。
ただ――そう、己が魂の形を示し続けるだけ。

「今まで待ち焦がれてたんだろ? こんな展開を……何のためにここまで歯を食いしばってきたんだ!?
 てめぇのその手でたった一人の女の子を助けて見せるって誓ったんじゃねえのかよ!?」

何のため? 決まっている、ナナリーのためだ。奴らの手の内に落ちた、世界全てよりも大切な、たった一人の妹の。
彼女一人のために多くの命を失った/失わせた。なのに無理だった、済まない――そんなこと、許されるはずがない。

「お前だって主人公の方がいいだろ!? 脇役なんかで満足してんじゃねえ、命を懸けてたった一人の女の子を守りてぇんじゃないのかよ!?
 だったら、それは全然終わってねぇ、始まってすらいねぇ……ちょっとくらい長いプロローグで絶望してんじゃねぇよ!」

終わってない。始まってすらない――そうだ、俺はまだ生きている。まだ、やれることがある……!
血を吐き、立ち上がった。背を向けている少年が、それでもニヤリと笑う気配がする。
銃を。召喚器を、構える。
力を借りるぞ、順平――!

「手を伸ばせば届くんだ! いい加減に始めようぜ、ゼロ……いいや――ルルーシュッ!!」

ああ、その通りだ――ゼロの仮面を、放り捨てる。
そして、腹の底から叫ぶ。俺が諦めないのなら、お前もまた――そうだろう?

なあ――――――――

「ナナリーを取り戻すために……力を貸してくれ! スザァァァァァァァァァァァァァァァクッッッ!!!!」

引き鉄を引いた――眼前に現れたのは、何者よりも速く、強い、純白の騎士。ランスロット――アルビオン。

『僕は君の剣……さあ、行こうルルーシュ。ナナリーが待っている――』



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