妄想1レスロワ1
二人の貴公子が対峙している。
一方はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、家を失ったブリタニアの皇子。
もう一方は天草扇千代、亡国の忍者集団、天草党の若き頭領。
二人は5メートルほどの距離を置いて睨み合っている。
ルルーシュの左目が怪しく輝く。
ナナリーを殺したこの男に復讐を遂げるために。
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる・・・貴様は・・・死ねッ!」
必殺の意思を乗せた眼光が、魔の左目より迸った。
その光は、あやまたず扇千代の目に吸い込まれた。
瞬間、扇千代の右手が翻り、腰より抜けれた秋水は、
彼自身の心臓を突き刺した。
会心の笑みを浮かべたルルーシュだったが、
刹那の後、その笑顔が驚愕の表情に変わった。
ルルーシュの口より血泡が漏れた。
己の手で自分を殺した瞬間、扇千代の双眸より迸った物…
『忍法山彦』
自身の知覚する痛みなどのあらゆる感覚を視線を介して相手に返すこの恐るべき忍法は、
己に降りかかった死を、山彦のようにルルーシュの体に返したのである。
果たして、ルルーシュの心臓は自ら弾けたのだ。
二人が地に臥したのは殆ど同時だった。
今わの際に、二人の脳裏を過った物。
愛しい人の姿。
(ナナリー・・・・俺も・・・・そっちに・・・・)
ルルーシュは先に逝ってしまったは愛する妹、ナナリーの笑顔を見た。
扇千代は、この殺し合いの最中出会った、一人の少女の姿を思い浮かべていた。
(かがみ殿・・・・・・)
体が地に落ちる。
(所詮・・・・・星が違ったか・・・・)
目の前が暗くなる。
(生きて・・・・・くだされ・・・・・)
こうして、愛に生きた二人の恐るべき瞳術の使い手は、ともに誰にも看取られることなく逝った。
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