お題・自分の出したいマイナーキャラロワ5
「くそっ!」
「ちょっと、穂村! 俺をおいていくなよ!」
穂村響は、後ろからついてくる軽薄そうな男の声に苛立ちを隠せなかった。
響は学生として生活をしていたが、ひょんなことからZAMZAによって変身能力を得た。
その力を持って、狙ってくるZAMZAの改造人間を退け、生活を仲間たちと共に守る日々を送っていた。
トレーニングの帰り、突如として首輪をはめられ、いつの間にかホールへと召還されて目の前で人が死んだ。
響は人並みには正義感を持つ。他人を命を弄んだ主催者を許せはしない。その傲慢な思考に怒りを覚えるが、現実的な手段がないのも事実。
どうしようかと悩んでいるところに、涼村暁が現れた。
「おいおい、あいつミサイルを撃ってきたよ。この顔に傷ついたら、世界が保有している核ミサイルより多い俺の彼女が泣いてしまうって」
「こんな状況でよく軽口を叩いていられるな!」
「へん、俺はスーパーヒーローなの。この程度のピンチ、物の数じゃ……ギャー! 頬に掠った!!」
スーパーヒーローならこの状況を何とかしろよ。そう吐き捨てたい衝動を、響はぐっと堪える。
暁は出会ったときからこの調子だ。人がいたことに喜んでいたが、響の顔を見るなり落ち込んだ。女性ならよかったのに、だそうだ。
この状況を認識しているのか、と問いたくなるほど暁はのんびりしている。
逃げている時もこの調子。正直見捨てていこうかと思い始めた頃、襲撃者が木々の枝を跳んで彼らの前に立つ。
「お、なかなかの美人じゃねえか」
「あら、ありがとう。お礼を言うわ」
青いアーマーをつける妖艶な女性が、響たちの前に立つ。敵対していた改造人間と同じく、この状況にも動じないプロの匂いがした。
どうするか。響が迷う。
「まあ……本当は人間を殺したくないけど、エックス様の命令じゃしょうがないのよね。
私は四天王の一人妖将レヴィアタン。悪いけど、恨まないでね」
鈴が転がるような軽やかな声で呟いて、ミサイルが放たれる。地面が次々爆ぜて、土が舞い散った。
響が腕を掲げ、『VITALIZE』と叫び獣人となればこの場は切り抜けられる。しかし、暁が見ている。軽薄で好感を持てそうにない相手だが、自分が化け物となる姿を見せたくはない。
あれは、響にとってコンプレックスに近いかもしれない。とはいえ、状況はそれを許さない。そうもいっていられないか、と響が決意をしたとき、
「ちょっと、お嬢さん! あんた可愛いけど、やりすぎだっつーの!」
「そういわれてもね。長引かせても、貴方たちじゃゼロのように楽しめないだろうし……」
「くっだらねえ! ゼロだかセロリだかしらねえが、お前のお仕置きは俺がしてやる。お尻ペンペンだ」
なにを無謀な。響が突っ込みたくなるが、暁はそれを無視して両足を肩幅に広げて右側頭部に右手を添える。
「燦然!!」
暁が叫んだ瞬間、彼の身体が光に包まれた。驚いているレヴィアタンをよそに、暁の身体が西洋の騎士に似た鎧に包まれていく。
黒いバイザーとクリスタルのボディを持つ戦士は、くるりと回り、レヴィアタンに人差し指を指す。
「やっぱ俺って決まりすぎ!」
能天気な声を耳にして、響は自分が改造人間イレギュラーとなった経緯と似た男涼村暁、シャンゼリオンと出会った。
前話
目次
次話