お題・自分の出したいマイナーキャラロワ4
森の中を、一人の少女が音もなく駆ける。
彼女……ナツメは、殺し合いに乗る決意を固めていた。
(ゼン……)
この殺し合いには、彼女が憧れる少年も参加させられていた。彼を死なせるわけにはいかない。
だから、彼以外の人間は自分が始末する。それが、彼女の選んだ選択だ。
しばらく進むと、一人の女性がナツメの視界に入った。地味な服の上から白いエプロンを身につけた、なかなか整った顔立ちの女性だ。
年齢は、ナツメより少し上だろうか。特に警戒している様子はない。
(やれる……!)
息を呑み、ナツメは支給品のナイフを構える。戦うことには慣れているが、人を殺したことはない。
かすかに、体が震える。その震えを押し殺し、ナイフを女性に突き立てるべく一気に距離を詰める。
その直後、ナツメの腹に鈍い衝撃が走った。彼女の体は吹き飛び、詰めた分の距離が元に戻る。
(え……?)
何が起きたのか、ナツメにはとっさには理解できなかった。
冷静さを取り戻し女性の体勢を確認したところで、ようやく彼女は自分が蹴り飛ばされたのだと理解する。
「この鬼丸美輝様に不意打ちとは、いい度胸だねえ……」
鬼丸美輝と名乗った女性は、よく通る声で言う。その声色に、命を狙われたという恐怖は微塵も感じられない。
「まあいいさ。こちとら、勝手にわけのわからないところに連れてこられてイライラしてたんだ。
ちょっと遊んでもらおうか?」
凶悪な笑みを浮かべながら、美輝はゴキゴキと指を鳴らす。
その鬼気迫る姿に、ナツメは自分が狙うべき相手を間違えたのだと認めざるを得なかった。
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