妄想かがみロワ






目を覚ますと、私の目の前には私がいた。
いや、これじゃ何のことだかわからないか。もう少し詳しく説明しよう。
私はある日突然バトルロワイアルとか言う殺し合いに巻き込まれ……。
仲間だったはずのゴマモンという不思議生物と仲違いし、彼にあっさりと殺された。
そのはずだった。
なのに、私は生きている。そして目の前には、高そうな椅子にふんぞり返る「私」がいた。

「さて、みんな起きたかしら?」

周りをゆっくりと見渡すと、「私」は口を開いた。その態度は、明らかに私たちを見下していた。
そう、「私たち」。ここにいるのは、私だけじゃない。他にもたくさんの人がいる。
私は、これにそっくりな状況をついさっき体験している。
忘れるはずもない。あのピエロの化け物たちに「殺し合いをやってもらう」と宣告されたあの時にそっくりだ。
そして「私」が紡ぐ言葉は、私の考えが間違っていないことを証明する。

「簡潔に言うわね。あなた達には新しいメンバーで、また最初からバトルロワイアルをやってもらうわ」

ああ、やっぱり。私は死を免れたわけじゃない。ただ、死ぬのが伸びただけなんだ。

「ふざけないで!」

突然、集められた人たちの中から声があがる。声の方向に視線を向けると、そこにはきれいだけどどこか存在感の薄そうな女の人が立っていた。

「あんた、身の程ってものをわかってるわけ? 下僕の分際で、この私を新しいロワに参戦させるなんて……」
「落ち着こうか、tu4氏。私は確かにあなたに仕えていた。でも、それはあっちの世界での話。
 この世界では、私の方が立場が上なのよ。その辺わきまえてくれる? 首輪を爆破されて、見せしめになるのはいやでしょ?」
「くっ……!」

爆破、見せしめ……。そういえば、あの時も首輪を爆破されて殺された子がいたっけ……。
まさか、今回も……?

「さて、ここにいる人たちはみんな首輪の脅威はわかってると思うけど……。
 まあお約束なんでね。ポチッとな。」

「私」が、手元にあったスイッチを押す。その直後、電子音がその部屋の中に響き渡った。
その音の出所を、私は必死に捜す。でも、わからない方がよかったのかも知れない。
その音は、私があまりに見慣れた人たちにはめられた首輪から発せられていたのだから。

「お姉ちゃ……!」

私がその言葉を言い終わるより早く、私がその人たちの顔を網膜に焼き付けるより早く、二つの爆音が響く。
そして私の大切な家族の命は、永遠に失われてしまった。

「あ、あ……。」

ショックが大きすぎて、意味のある言葉が口から出てこない。
今の私の心には、「私」の放つ言葉の意味を理解することすら出来なかった。

「さあ、恒例行事も終わったし……。これよりバトルロワイアルを開始するわ!
 『私』と出会ったのがあなた達の不幸……。恨むなら『私』を恨むことね……。」

【柊いのり@カオスロワ 死亡】
【柊まつり@カオスロワ 死亡】




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