妄想恋愛フラグクロスロワ2話






阿部高和は興奮した。
名簿を広げ目を通す。あの会場では女の姿が若干目立ったが――。
いるいるいるいるいる。
外人、日本人、人種が特定出来ないような名前もあったがそんなことは関係無い。
問題は、それがいかにいい男であるかということだ。
あの娘は言った。これは恋愛フラグロワであると。
つまり会場に呼ばれたあの男女の大半はアベックなのだろう。しかしどうでもいいことだ。
男を喰うのに女付きかどうかが関係あるだろうか、いや、無い。
「 それに――」
――キョンくん。君をまた食えるとはなっ!
名簿にキョンの名前を発見した阿部は小踊りした。
どういうことかは分からないが、彼は生きていてる。きっとあの時より熟成しているだろう。
――また楽しませてくれよ!
キョンのケツを思い出し、阿部のドリルは天元突破せんばかりに覚醒した。
どうやらここに連れて来られる時にあらゆる手当てをされたらしい。
ドリルを含め体の調子は万全だ。きっと最高に楽しめるだろう。

そんなことを考えながら、視界の端に表れた男を喰らうべく歩を進めた。
まずは君をいただくよ――!

※※※

Dボウイは激怒した。
ゆたか――舞衣――。
名簿には、自分と行動を共にし、守り助けるべき存在である彼女達の名があったのだ。
先程までいた会場とは違う場所ではあるらしいが殺し合いが続いていることに変わりは無い。
その上あの殺し合いを宣言した少女――。
彼女は明らかに様子がおかしかった。あの時抗議をしていた彼女の元仲間とおぼしきオレンジ髪も異変に戸惑い取り乱していた。
そこから導き出される結論は1つ。
――ラダム。
憎き敵は舞衣に寄生するにとどまらず、あの見知らぬ少女を殺し合いという暴挙に走らせるまで侵食したのだ。
絶対に――許さない――!Dボウイの中に満ちたどす黒い憎悪は、背後の気配にふいに揺らされることとなる。
「誰だ」
「阿部高和だ。君は?」
振り向くと、つなぎの男が立っていた。同性から見てもいい男である。
「Dボウイだ」
「良い名だな。体の締まりもいい。鍛えてるのか?」
「あ、あぁ……」
阿部の視線はDボウイのたくましい体を這い舐めた。
何故だろう。友好的に近付いてくる目の前の男に敵意は感じられない。だが本能が警告している。
NI☆GE☆RO!DengerousBoy!
(今のデンジャラスのDはDボウイ自身を指すのではないっ。阿部を指すDだっ。)
普段ならば危険な相手でも逃げる必要は無い。この強化された体なら普通の人間に負けることは無いからだ。
なのに――どうして――

俺はこんなに怖がっているんだ!

阿部はゆっくりとつなぎのジッパーに手をかけた。

「や ら な い か ?」

不幸王Dボウイの不幸。
それは様々な不幸を知りながら、この手の不幸を知らなかったこと、ただそれだけだった。

一瞬の怯みの先に待っていたのは、地面に背をつく強い感触と目前に迫るガチホモの顔。

「楽しくなりそうだな、Dボウイ君」

アニ2のギャルゲ主人公と呼ばれ2つのフラグを待っていた男は
"フラグは男キャラ全員"の阿部に勝てるはずもなかったのである。



前話   目次   次話