妄想恋愛フラグクロスロワ1話






目が覚めると、無機質な講堂だった。大広間とも言うべきか。とにかく、とても広いスペースってことだ。
しかし今ここにスペースなんてものは無い。なんせ床一面に老若男女が横たわっているのだ!
「これは一体……」
思わず呟いたと同時に気付いた。眠る大衆を見下すように備えつけられた王の座の存在。そしてそこに腰をかける少女を。
短い髪が一見すると少年と見違える少女はタイトなスカートに包まれた足を組んでいた。
さらにこの高低差。つまり彼女の太股の先に待つ秘境を目に納めるのに何の苦労もいとわないのである!
これはチャンスだぞ!あと少し近付けば――!
彼女のそこから決して目を離さぬように慎重に歩を進めた時、ふいに少女の口が動いた。

「皆目が醒めたみたいだね!さあほら起きて起きて!寝てる人は起こしてあげてね!」

気付けば先程まで床に臥していた連中もそのほとんどが既に半身を起こしている。
不穏なざわめきが辺りを包んでいた。

HAHAHA!まさかこんなシリアスな空気になってたなんてな!
ちょっと空気を読めてなかったな〜。

「皆おはよう!私はスバル・ナカジマ!」

王の座から発せられる王の言葉。ざわめきは止まらない。
しかしこの異様な光景の中でただ一人優位な存在であるスバルと名乗った少女に視線は集中していた。
「今日集まってもらったのは他でもありません!
これからちょっと皆に殺し合いをしてもらいます!」

殺 し 合 い

この現実と乖利した言葉が大衆をどう動かしたか。
それは考えるに及ばない。先程のざわめきが場内を内側から崩さんばかりに拡張してゆく。
何を言ってるんだ?この娘は――?

「ちょっと話聞いてもらえるー?皆びっくりしてると思う。
それは分かるけどさ、私の話も聞いて欲しいの」

淀む喧騒。会場全体が明るくはつらつとした少女の言葉を待った。

「分かってると思うけど、これは皆にとって二度目の殺し合いだよね?
ちょっと目を閉じて、思い出してごらん」

二度目?二度目ってどういうことだ?
さっぱり理解出来ない。だって目を閉じて思い出せるのは
ついさっきまで歩いていた道の風景だとかそれくらいだ。あれは綺麗だったなー

「皆、ちょっと緩すぎたよね。殺し合いって言われた中で
ラブラブラブラブラブラブ……!
あんなんじゃ殺し合いの意味無いじゃない!恋愛フラグ?ハッ!馬鹿馬鹿しい!
皆ちょっと頭冷やそうよ!」

あー!もうわけわからない!周りからは息を呑む音がたくさん聞こえた。
皆心当たりがあるらしい。いや、恋愛という点では僕にだって思い当たる節はある。
だけどそれが何の関係があるんだよ。
僕の恋心は秘めたる大人の愛!あの少女が知るはずが無い!

「スバル!!あんたどうしたのよっ!!何考えてるの!?」
「あぁ……ティア」
気付けば割りと近くにいたオレンジ髪の少女がいきり立っている。
あの"スバル"と知り合いなのだろうか、その顔は怒りに歪んでいた。

「スバル!どういうこと!?説明して!」
「ティアはさぁ……ある意味最大の裏切り者だよね」
「なっ……」

オレンジ少女の勢いは止まる。いつのまにか空気は凍りついていた。

「私が必死で闘ってた時、ティアは何してた?
ヤンヤンヤンヤンデレデレデレデレ……!!パートナーである私をさしおいて!
……馬鹿じゃない?」
「……」


「ティアなんか死んじゃえばいいんだ」


"ティア"はうつ向いたまま肩を震わせ動かない。
スバルは「マッハキャリバー」と一言呟き、そして魔法少女定番の裸を通じた変身をした。

しかし今、裸など見たって興奮などしない!何故ならこのスバルの企みを理解したから!
僕の解釈が正しければ、僕の愛する"彼女"もここにいるということだ!

「うをおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

体は勝手に動いていた!
ティアを消そうと、王の座から降りたスバル目がけて!

「こんなこと僕は認めない!!三四さんを傷つけるやつは僕が許さない!!!

くらえええええええ!
富竹FLA――!?」

無い。いつもの所定位置。そこに富竹最大の武器であるカメラがなかった。
何故今まで気付かなかったんだ――!
マズイ、と思った時にはもう遅い。スバルの振り被った右手が目前に迫っていた。


◇◇◇

「皆の持ち物は全て没収したから。頑張って最後の一人になるまで殺しあってね」

こうして殺し合いは始まった。


【富竹ジロウ@見せめ 死亡】
※トミーは見せしめ要員だったので鷹野は参加していません。



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