妄想巨大ロボもの以外の作品でスパロワ2話






彼は恐怖していた、彼の短かくも波乱の人生で死の危険は何度もあった。
だが今回は毛色が違いすぎる、『殺し合え』そう言われた。八つ当たりで手近な友人を殴り飛ばす暴君ではあれど、彼は人を殺すような外道ではない。
この殺し合いを止め友人達を守らなくてはならない、彼は殺し合いを止める手段を持っており、
彼に支給された機体もまたその手段を有効活用できる、寧ろその手段の為だけに存在しているかのようなマシンであった。
大きく息を吸い込み、意識を集中する。緊張が、恐怖が体を支配していく。
それでも彼はこの殺し合いを止める為にその手段を決行した。歌うという行為を。

「おっれはジャイアーン♪ガッキ大s」

彼、ジャイアンこと剛田武の最大の不幸は、自分の歌の本来もたらす影響を認知していなかった事だ。
窓ガラスを割り、のび太の家の壁に亀裂を入れるような歌を精密機械の密集するコクピット、しかも戦場において歌う為にカスタマイズされているファイアーバルキリーの中で歌えばどうなるか?
コクピット内の歌を広い増幅して放つ過程で、破壊音波と言っても過言ではない歌声に耐えきれなかったファイアーバルキリーは崩壊爆散、搭乗していたジャイアンもまた何が起きたのか理解する暇も無く爆炎に飲まれたのだった。
殺し合いを止め、仲間を救おうとした一人の勇敢な少年は、こうしてその生を終えた。

【剛田武@ドラえもん:死亡確認】



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