お題・足を滑らせ踵落としを避ける2
――死んだな、これは。
コンクリートの壁に背を預けながら、6/は死を覚悟した。
彼の目の前にあるのは、見せつけるように高く上げられた踵。
範馬勇次郎特性の踵落としという、あまりに嬉しくないプレゼントだ。
「あばよ」
死の宣告と共に、死神の鎌……いや、鬼のナタが振り下ろされる。
6/は絶望し、同時に走馬灯が頭を過る。
やたらとかがみの姿が多いのは、きっとそれだけいがみ合っていたということだろう。
――それも、もう終わりか。
諦め、6/は無意識に膝を折る。
――これが、6/を救うドミノ倒しの一枚目であった。
つるっ
「は?」
「ほぅ」
膝を折り崩れた瞬間、6/は前のめりにすっ転んだ。
足元に紙でも挟んでいたのか、それとも滑りやすい床だったのかは分からない。
元から6/が被っていた精液が汗と失禁で何らか化学変化を――生き残るために、人体が進化したのかもしれない。
何はともあれ6/は滑り転がり――勇次郎の踵落としは、直前まで6/が背中を預けていたコンクリートを削りなぞって終わった
――っても、ピンチなのは相変わらず……?
6/がメキメキと音を立て床が崩れていくのに気がついた時は、既に遅かった。
コンクリートの床は崩れ、その下にあった地下水道へと6/はその身を落とし姿を消した。
「……面白れぇ」
崩壊するコンクリートから逃れていた勇次郎は顔を嬉しそうに歪め、地下水道へと飛び込んだ。
6/の運命は如何に!
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