妄想ネズミロワ
不意に奇妙な感覚が襲い、――は目覚めた。
そこは屋内だった。薄暗いその中、しかし、どうもこの部屋に居るのは自分一人ではないらしい。
何がどうなっているのか、未だに頭が混乱していた。――が、すぐにその状況は一変した。
唐突に、予告なく部屋が明るくなり、強いスポットライト、そこには黒い鼠が立っていた。
「みんなー、元気に眠れた?」
陽気で甲高い声が、部屋の壁に反響し、ステレオっぽく聞こえた。
「僕はミッ〇ーマウ〇!あ、君達には首輪を付けさせてもらったよ!」
ミッ〇ー? 首輪――
――は自分の首に手を当て、ようやく気付いた。
かつん、と明らかに冷たい感触が指に触れた。これは?
「この首輪は――」
首輪の説明がミッ〇ーと名乗った自身の口からそれからなされようとした時、誰かが叫んだ。「信じられるか」と。
それに続けて「ふざけるな!」だとか「今すぐここから出せ」だとか、そんな声が喚かれた。
ミッ〇ーは表情を変えずにその要求を一通り聞いてから、しかし別の解決案を提出した。
「もうーしょうがないなあー」
ミッキーが何か、小さいスティックのようなものを取りだし、スティックに付いていたスイッチを押した。
ピ、と、なんだかマヌケな電子音がスティックから鳴いた。
――!?
即座にドン、と、何か大砲でも撃ったような重い音が響き、天井に向かってクリムズン・レッドのスプレーが撒き散らされた。
生暖かい空気が放出され、それが余計に緊張に刺激したのかも知れない。一瞬で、ざわめきは止んだ。
ついでに、何か赤い物が自分の頬に付着した気がした。
「きゃああああああ」
ミッ〇ーの近く、最前列の誰かが絶叫した。
すぐにその隣りの数人も、続けてそれに合わせて唱和した。
何があったのか、それを調べようと身を乗り出した者達により、更にソプラノのコーラスが膨れ上がった。
――も、悲鳴が上がる中、鼠の壁の隙間からそれを見た。
鼠の壁とミッ〇ーの間の空間に、違和感のあるそれ――が横たわっていた。
体付きからしてリスだったのだろうか? 違和感の原因としては――首から上が、頭の代わりにミンチ肉が配置してあったことだ。
そう、これがこの首輪とやらの効力なのだろう。
そして、この頬に付いている”赤い何か”は、かつてその頭の一部だったのだろう、容易に想像がつく。
普通に考えたら、悪夢とすら考えるんじゃないんだろうか?
しかし、新鮮な血の臭いが一気に現実に引き戻した。
未だに悲鳴、更に誰かが吐き戻している音が耳の中の鼓膜を捉えた。
「ほらほら静かにして! 全く君達はー」
呑気に、しかし”スティック”を掲げられながらそう言われたものだからたまった物ではない。
もう、誰も口を開けなかった。
そんなわけで平等に凍り付いたその場がミッキーの現在の立場を表していた、と言ってもよいだろう。
そして、ミッ〇ーは言った。
「これから君達に殺し合いをしてもらいまーす」
部屋全体に戦慄が走ったのが分かった。
要に、これから起こることは簡単に容易に想像がつく。
つまり、最後の一人になるまで自分達は互いに殺し合うのだ。
――ミッ〇ー自身の娯楽の為に。
クソ、どうする……!?
【ギグルス@ハッピーツリーフレンズ 死亡】
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