妄想ミステリアスロワ2話
「おらぁ、こげなおそろしかことしたくないでゲス。早くこんなとこから逃げたいでゲス」
ジャージー・デビルは、この場所に連れてこられた者たちの中で今一番錯乱に近い状態にあった。
殺し合いなんかしたくない。しかし、自慢の羽で空へと逃げようにも、主催者によってその飛行能力は制限されていた。
「そうだ、武器……強い武器があれば、おらでも生き残られるかも知れないでゲス」
そう信じて、自分の支給品袋を開けてみる。
と、それとほぼ同時に自分の目の前の茂みが揺れて、小山ほどもある大男が飛び出してきた。v
黒い剛毛に覆われた筋骨隆々とした肉体に、口を閉じていても見える巨大な犬歯。
人里で育ったジャージー・デビルは、その初めて見る野生の怪物を目にして失禁せんばかりに震え上がった。
そして、ほとんど訳も分からぬまま、咄嗟に鞄の中にあった鉄球を怪物に向かって投げつけた。
鉄球は怪物にぶつかると同時に、すさまじい音とともに破裂した。そして、その中からは大量の釘が飛び出した。
釘は怪物の顔と体に容赦なく襲い掛かり、地面にも幾本か突き刺さる。
その突き刺さった深さが、このトラップの威力を示していた。
しかし、その怪物は何本もの釘の当たった顔を何度か煩わしそうに撫でると―――
「オマエ、イマ、オレニ、ナニカシタノカ?」
犬歯を剥いて、露悪的に笑って見せた。
「ば、馬鹿な……こんなのありえないでゲス!!」
あの爆弾の威力は確かだった。なんで、あれだけの金属の針の雨を受けてこの獣人は平気でいられるのか。
その獣人―――ビッグフットは、自分の胸を手の甲で叩いて見せながら言った。
「オレノカラダ、ゴムデデキテル。ナグラレヨウト、ケラレヨウト、オレ、イタミヲカンジナイ」
【一日目・午前二時/G-3 森林地帯】
【ビッグフット@獣人】
[状態]健康
[装備]不明
[道具]支給品一式 不明支給品2
[思考]
1、優勝してアメリカに帰る
※ 体がゴムで出来ています
【ジャージー・デビル@空中未確認動物】
[状態]健康 失禁
[装備]不明
[道具]支給品一式×2 不明支給品×2
[思考]
1、とにかくこの場から逃げたい
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