無題






特に目指す場所や会いたい人間がいるわけでもなく、KuKioは適当に会場内をぶらぶらしていた。
するとF-2にさしかかったところで、女性のすすり泣く声が聞こえてきた。

(む!俺の直感が行かねばならぬと告げている!)

迷わず泣き声のする方向へ向かうKuKio。やがて彼は、地面に座り込んで泣く隻腕の少女を発見する。

(あれは漫画ロワのかがみ…。暴走状態ならともかく、隻腕になってからなら危険はないだろう。
 話しかけてみるか。)

KuKioはそっとかがみの背後に近づき、声をかける。

「あのー、ちょっといいかな。」
「ひっ!」
「ああ、大丈夫。君に危害を加える気はないから。ただ、なんで泣いてるのか気になってね。」
「みゆきが…。私の友達が…。」
「え…?」

かがみの言葉を聞いて、KuKioは気づく。彼女の前の地面が不自然に盛り上がっていることに。
明らかに、それは何かを埋めた後だった。

「まさか…。もう殺されたっていうのか…。そんな…。」

愕然とした表情を浮かべ、膝をつくKuKio。
彼にとって、みゆきは戦記での自分の娘という愛着のあるキャラである。
それを差し引いても、仮にも「空気王」を名乗る彼にとってロワ内どころか原作でも空気扱いされているみゆきは愛すべき存在であった。
それをむざむざ死なせてしまったというのは、KuKioにとって大きなショックだ。
しかし、かがみはそんな事情を知るはずがない。
彼女の視点から見れば、KuKioは「見ず知らずである自分の友人の死を嘆いてくれる、すごくいい人」である。

「あの、お名前は…。」
「え? ああ。名簿にはKuKioで載ってます。まあ、通称なんですが。」
「KuKioさん、お願い!私と一緒に戦って!」
「ま、まあ自分も殺し合いに乗るつもりはないからいいけど…。」

思わぬ形でかがみの信頼を得たKuKioは、彼女と情報交換を兼ねた自己紹介を行うことになった。
とは言ってもKuKioはかがみについてのことはあらかた知っているのだが、それを言うと話がややこしくなるので黙っておいた。

「ところで、何か武器ないかな?自分の支給品、ハズレばっかりでさあ。」
「ああ、それならこれは?」
「ああ、いいね。使わせてもらうよ。」

かがみから支給品をひとつ分けてもらい、ほっとした表情を浮かべるKuKio。
だが、そこにひとつの影が忍び寄る。

「ロワの最中にのんびりデートとは…。このほのぼのスキーどもめ!」
「ほのぼのスキー…。あんた、ドットーレ氏か!」
「いかにも!そういうあんたは空気王氏だな?」
「ちょ、なんでわかるんだよ!自分は書き手ロワに出てないし、誰だかわかるような発言もしてないぞ!」
「楽天のユニフォーム着てるやつなんて、あんたかマダオ氏しかありえんわ!」
「あ…。」

そう言われてみればそうだなー、とKuKioは頬を掻く。

「何? KuKioさんの知り合い?」
「まあ、一応そうなんだけどねえ…。」

KuKioの脳裏によぎるのは、これまでのドットーレの活躍。

書き手ロワのドットーレ→マーダー。同じく仮面ライダー書き手→マーダー。戦記のドットーレ→過激な武闘派。
どう考えても危険人物です。本当に(ry

「念のため聞いておきますけど…。ドットーレ氏、ゲームに乗る気は?」
「もちろん…ある。」

はっきりと答えると、ドットーレは支給品のカイザフォンにコードを打ち込み、ベルトにセットする。
瞬く間に、彼の姿は仮面ライダーカイザとなった。

「え? 何あれ、仮面ライダー? あの人、村雨さんの仲間?」
「仮面ライダーなのは確かだけど、正義のために戦うつもりはなさそうだよ。」

KuKioの顔には、大粒の汗が浮かぶ。まずい、どう考えても勝てない。

「かがみさん、俺が時間を稼ぐ。その間に君は逃げるんだ。」
「え? 駄目よ、それなら私も戦…。」
「いいから逃げろ!邪魔なだけだ!」

鬼気せまる表情でどなるKuKio。それを見ては、かがみは逆らえなかった。

「…ごめんなさい!」

目にうっすらと涙を浮かべながら、かがみはKuKioに背を向けて走り出す。

「麗しい親子愛だねえ。」
「否定はしない。で、追うつもりはないのか?」
「今回の参加者はたった28人。俺が欲張らなくても、誰かが人数を減らしてくれるさ。
 別にトップマーダーを目指してるわけでもないしな。」
「27人殺しがよく言う…!」
眉をひそめながら、KuKioはかがみから譲渡された支給品、軍刀を構える。

「軍刀…? ああ、なるほど。俺の作品を再現してくれるってわけか。
 かがみがルイズ、あんたが杉村、俺が三影さんのポジションだな。
 けど、いいのかい? それだと杉村のあんたは…死ぬぜ!」

ドットーレは第二の支給品、ハカイダーショットを取り出す。
そして、ためらうことなく銃弾を発射した。

「はっ!」

だがその弾丸は、KuKioを貫く前に軍刀に切り捨てられる。
その光景には、さすがのドットーレも驚愕した。

「バカな…。素人に弾丸を切り落とすなんて真似できるはずが…。
 出来たとしても、ハカイダーショットの弾丸は超高周波炸裂弾!
 受けた刀が粉々になるはずだ!」
「理由は三つだ。ひとつ、書き手ロワ書き手に常識など通用しない。
 ふたつ、あんたが杉村の魂を込めたこの軍刀、そう簡単には折れない!
 そしてみっつ…。俺がもっとも評価されている点を言ってみろォォォォォ!」
「支給品の活用に定評のある空気王…か。」
「そうだ!使える支給品さえあれば、自分は負けない!!」

KuKioは叫び、そして走る。ドットーレとの距離を詰め、軍刀を振り下ろす。
それを左腕で防御するドットーレ。だが軍刀はライダーの装甲すら貫き、腕に食い込む。
「現実出典の武器でそこまでやる意気込みは見事!だが、それは悪手だったな!」

軍刀が腕に食い込んでいては、当然それを振るうことは出来ない。
無防備なKuKioの腹に、ドットーレは至近距離から弾丸を撃ち込む。
「がああああああああ!!」

まるで巨大な水風船が破裂したように、KuKioの胴体から血が噴き出す。
彼の体は後ろに吹き飛ばされ、受け身も取れずに地面に叩きつけられた。

「ち…くしょう…。」
「俺に一太刀浴びせた褒美だ。最期の言葉ぐらいは聞いてやるぞ。」
「いいのか? それなら野球とジョジョと名塚佳織の魅力について3時間話し続けるぞ。」
「…前言撤回だ。3分以内なら聞いてやる。」
「なら、最期に水飲ませてくれ。」
「末期の水というやつか…。いいだろう。」

ドットーレは水を取り出そうと、吹き飛んで近くに落ちていたKuKioのデイパックに手をかける。その瞬間…。
(なっ、デイパックが、光っ――――。)

(ははは、だから自分は、支給品の使い方には定評があるんだって…。)

「カレー爆弾とは、やってくれるじゃないか…。」

忌々しげに、KuKioに向かって呟くドットーレ。
しかし、既に事切れたKuKioからの反応はない。
幸いカイザに変身していたおかげで火傷などの直接的な怪我はなかったが、それでも爆発の衝撃は肉体に少なからずダメージを与えていた。

「10分で変身解除ということは、カイザフォンはライダーロワ仕様か…。
 まあいい。ハカイダーショットがあればそうそう後れを取ることもないだろう。」

銃を乱暴にポケットにつっこみ、ドットーレは次の獲物を求め歩き出す。

(しかし、妙に体が熱いな…。どうしたんだ?)

彼は知らない。自分が爆発によって気化した、シャリダム汁を吸ってしまっていることを。
それが何をもたらすのかを。

【一日目・午前三時/F-2 プラネタリウム】

【ドットーレ@クロススレ】
【状態】:全身にダメージ、左腕に刀傷、興奮状態
【装備】:カイザフォン(あと二時間使用不可)@ライダーロワ、ハカイダーショット@ロボロワ
【道具】:支給品一式、不明支給品(0〜1)
【思考】
1:力がすべてであることを証明するため、マーダーとして戦う。

※軍刀@漫画ロワは、KuKioの死体のそばに放置。

【KuKio@クロススレ 死亡】


逃げる途中、かがみは自分がいた方向から爆発音が響くのを聞いた。

(KuKioさん…。)

確証はなくとも、かがみは直感で理解した。今の爆発は、KuKioの死を知らせるものなのだと。

(本当にごめんなさい、KuKioさん!でも、あなたに助けてもらったこの命は無駄にしないから!
 必ずこの殺し合いをぶち壊してみせるから!)

大粒の涙をこぼしながら、かがみは走り続けた。


【柊かがみ@漫画ロワ】
【状態】:右腕欠損、深い悲しみ
【装備】:なし
【道具】:支給品一式、不明支給品(0〜2)
【思考】
基本:バトルロワイアルの破壊。
1:今は逃げる。
2:知り合い(こなた、出来れば三村とも)との合流。
3:ところで、なんで名簿に私の名前が四つも…。

※233話「決戦」終了直後からの参戦です。



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