デストロイ
ビル街を一筋の光が疾駆している。
それは壁にぶつかるとあらぬ方向へと跳ね返り、その先でまた違う方向へと繰り返し次々とその身の置き所を変えていく。
当然、凄まじい衝撃でぶつかられた方は狼藉者を送り出した後例外なく瓦解する。
ドミノ倒しのように破壊が連鎖し、土煙がもうもうと上がった。
街の片隅で手を上げる。
そこに、まるで予定されていたように寸分の狂いもなく先程の光が飛び込んだ。
それはボール――バスケットのボールだ。
ただし、小さな家ほどもある巨大なサイズの。
ボールを受け止めた人――否、巨人は何をするでもなくボールを地に叩きつける。
ずんぐりむっくりとした体型の、緑色の巨人。
石畳をかち割ったボールは跳ね上がって再び巨人の手の中へ。
巨人はその手をおもむろに振りかぶると――
「デェェェェストロォォォォォォォォォォォォォォォォイッッッッ!!!!」
思い切り撃ち出した。
投げ飛ばした、ではなく撃ち出した。まさしくそうとしか形容できないほどの速度で。
ボールは轟音とともにビルへと激突し、一面ガラス張りの壁面へと衝撃を走らせる。
伝播した衝撃がガラスを粉雪のように粉砕し、吹き散らせる。
その煌めく雪が地に到達するころ、ボールは既に遥か彼方で同じ惨劇を生み出している。
その光景をじっと見つめる巨人の乗り手。
メガネのようなアクセサリを付けた、怜悧な容貌の青年。
ただじっと、己が行動した結果生まれ出た破壊のプロセスを見つめている――
やがてボールが三度その手の内へ。
男はボールをまるで仇のように睨みつけ、そして。
「デストロイデストロイデストロイデストロイデストロイデストロイッ!」
破壊されていく街にあってただ一つ無事な姿を保たれていた巨木へと、繰り返し叩きつけた。
跳ね返るボール、投げ返す巨人、散り舞う木の葉、揺れる木々のざわめき、鳴り響く轟音。
やがてそこに異音が混じる。
ベキベキ、と何かが砕けるようなそんな音が。
一切構わず巨人はボールを一心不乱に木へと撃ち出し続ける。
「デストロイデストロイデストロイ――デストロォォォォォォイッ!!!!」
気合一閃、蒼い輝きがボールを包んだ、ように見えた。
そして。
「……ふうっ」
男の、満足げな吐息とともにボールはその足元へと転がった。
視線の先、全ての葉を振り落とされ、丸裸となった樹が半ばに一つ、黒点を穿たれ――ヒビはあっという間にその領土を広げ、巨木の身を真っ二つにヘシ折った。
緑色の巨人――ウォーカーギャリアの中で、男――アイスマン・ホッティは昂るその心を治めるかのように呟いた。
「とりあえず、バスカッシュの相手を探しますか」
【一日目 12:10】
【アイスマン・ホッティ/ウォーカーギャリア】
【パイロット状態】 健康
【機体状態】 良好
【現在位置】 H-1
【思考・状況】
1:バスカッシュ
2:デストロイ
【アイスマン・ホッティ@バスカッシュ!】
チーム・バスカッシュの凄腕バスカッシャー。
「燃える氷結地獄」の異名を持つクールな青年。
普段は礼儀正しいが、バスカッシュの場とあれば誰であろうとお構いなしに剛速球を叩きつけるラフプレイを展開する。
アニメの終盤では「蒼き雷の球」という主人公であるダンとは違う「伝説」に目覚めた。
【ウォーカーギャリア@戦闘メカ ザブングル】
イノセントの開発した完全な戦闘用ウォーカーマシン。
背面の巨大なローターにより抜群の跳躍力を得ており、またパワーと機動力も高い。
ICBMを投げ返したり、バタ足をしたりとコミカルな動きが多い。
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