The Good, the Bad and the Ugly
謎の組織によって仕組まれた殺し合い“バトルロワイヤル”。
その舞台として用意された広大な敷地の中に何故か存在する西暦2000年代の日本を再
現した市街地の一角に、性質の悪い冗談のようにそびえ立つネオンサインも鮮やかなスー
パー銭湯「じゃぶろー」。
その一室で、一人の女がシャワーを浴びている。
金髪である。
美人である。
そして巨乳である。
女の名はマリー・チャンプ。
よほどの大物か単なる馬鹿か、殺し合いの最中だというのに優雅に鼻歌を歌いながらグレ
イトかつエクセレントな裸身を暖かな湯で清めるマリー。
そしてドアの外では二人の男が向かい合って椅子に腰掛け、殺気のこもった視線を投げ合
っている。
男の片方はゴステロ。
もう片方はカン・ユーという。
三人が出合ったのは30分前、街はずれの荒野であった。
ガッキィィィィンッ!
硬質な音を響かせて、剣とカギ爪がぶつかり合う。
「大人しく真っ二つになりやがれェ!」
「てめえこそハラワタぶちまけろォ!」
激しく戦う二機のロボット。
どちらもサイズは10メートルクラスだが、一機は右手に剣、左手に盾を持った騎士を思
わせる青い装甲の人型ロボなのに対し、もう一機は赤と黒のボディーカラー、鋭い爪と牙
を持ち、背中から胴体左右に向って巨大な鎌を突き出した肉食恐竜型ロボだ。
騎士型ロボの名はザウエル。
惑星アーストの先史文明が生んだ機甲兵と呼ばれるロボットである。
恐竜型ロボはレブラプター。
惑星Ziに生息する金属生命体「ZOID」を有人兵器に改造したものだ。
見た目からカラーリングまで対照的な両機だが、射撃兵装を持たない格闘専用機という点
は奇妙な一致を見ている。
「コレで決まりだァ!」
ザウエルのコクピットでゴステロが哄笑した。
ブレードを高速回転させた剣で矢のような突きを繰り出す。
「地獄で笑えェ!」
レブラプターを跳躍させながらカン・ユーが吼える。
両足にひときわ大きなカギ爪−ストライクハーケンクロー−を装備したヴェロキラプトル
型ゾイドが空中から蹴りを放つ。
ドンドンドンッ!
剣とカギ爪が交錯しようとした瞬間、周囲に吹き荒れる炎と爆風の嵐、衝撃で無様に引っ
くり返る二機のロボット。
「だ、誰だァ!」
「ふざけやがってェ!」
「すいませ〜ん、喧嘩を止めるつもりだったんですけどつい一斉射撃のスイッチを押して
しまったみたいでぇ〜」
通信機から流れてきたのはとろけるようなハニーヴォイス。
だが現れのは両肩から突き出した大口径カノン砲に両腕の内装式四連装ガンランチャー、
下半身は脚ではなく、戦車というよりは土木機械に近い無骨な無限軌道。
絵に描いたような砲戦特化型モビルスーツ、量産型ガンタンクだった。
頭部のキャノピーが開き、パイロットが立ち上がるとフリルのついたスカートがフワリと
広がる。
「とりあえずあそこに見える街に行ってお茶でもしませんか?」
余りにも場違いな装いの美女とあまりにも屈託の無い笑顔、そして余りにも現状を無視し
た発言に毒気を抜かれたカン・ユーとゴステロは、気がついたときにはさも当然といった
風情でガンタンクをエスコートしていた。
街に入った三人は、ガンタンクが納まるほど不自然に大きな地下駐車場を持つスーパー銭
湯の一階にあるラウンジでコーヒーを飲みながら−無人でありながら水道は使えるうえ食
料及び調理器具は完備していた−互いの自己紹介をしていた。
「まあ、それではお二人とも異星人さんなのね、素敵!」
両手を合わせ、瞳を輝かせるマリー。
一方野郎二人は揃ってこう考えていた。
(オレは一体何をしているんだ?)
相手は世間知らずのお嬢様一人である、普段の二人なら有無を言わせず埋めて殺して犯し
ているところなのに、何故かこのマリーという女の持つオーラというか独特のカリスマの
ようなものに当てられると、すっかりペースを狂わされてしまう。
それに−
カン・ユーはゴステロを、ゴステロはカン・ユーを、ジロリと横目で睨んだ。
マリーが介入してくるまでの戦いで、互いに戦士としての力量は甲乙付けがたいというこ
とは判っている。
そして面つき合わせてみて自分たちが同類−右手で握手しながら、左手で喉笛を掻き切る
野郎だということ−がはっきりと判った。
「お二人みたいに頼もしい殿方に出会えて幸運でしたわ〜、不束者ですがよろしくお願い
しますね〜」
結婚披露宴の挨拶みたいなセリフを言いながら席を立つマリー。
「おい、どこ行くんだ」
「せっかく公衆浴場があることですし汗を流してきます〜」
脱衣所の扉の向こうに姿を消すマリー。
服を脱いでいくマリーのシルエットが影絵のようにガラス戸に映っているのもスルーして、
カン・ユーとゴステロは同じ籠に入れられた蠍とコブラのように、不気味に互いを牽制し
あっていた。
【一日目 12:30】
【マリー・チャンプ/量産型ガンタンク】
【パイロット状態】 健康
【機体状態】 良好
【現在位置】 A-7
【思考・状況】
1:参加者全員の無事脱出を目指す(具体的なアイデアは何も無い、完全な成り行き任せ)
2:カン・ユーとゴステロを全面的に信用している
【ゴステロ/ザウエル】
【パイロット状態】 健康
【機体状態】 良好
【現在位置】 A-7
【思考・状況】
1:自分以外は皆殺し
2:しばらくは様子見
3:マリーはいつでも始末できるがカン・ユーが邪魔
【カン・ユー/レブラプター】
【パイロット状態】 健康
【機体状態】 良好
【現在位置】 A-7
【思考・状況】
1:自分だけは生き残る
2:しばらくは様子見
3:マリーはどうとでもなるがゴステロは油断できない
【マリー・チャンプ@ゾイド新世紀/ゼロ】
惑星Ziの大富豪チャンプ財閥の令嬢
第9話「女帝登場」に出演しただけのゲストキャラだが無敵のマイペース&天然っぷりで
鮮烈な印象を残した
キャスト:平松晶子
<いい人>
【ゴステロ@蒼き流星SPTレイズナー】
グラドス軍大尉
「俺は人殺しが大好きなのよ!」「脳が痛い!」等の名セリフを持つアルティメット・オブ・
アルティメットな悪役
TVシリーズ開始前の時点からの参戦
CV:広瀬正志
<悪党>
【カン・ユー@装甲騎兵ボトムズ】
クメン王国の傭兵部隊アッセンブルEX−10のナンバー2でAT隊の指揮官
アニメではキリコの引き立て役としてことさら無能に描かれていたが曲者揃いの傭兵たち
を率いて最前線の死闘を生き延びてきた実力は本物
TVシリーズ開始前の時点からの参戦
中の人:広瀬正志
<卑劣漢>
【量産型ガンタンク@機動戦士ガンダム 第08MS小隊】
コアファイター機構を省略し乗員を一名とした簡易量産型
戦車のように上半身の全周旋回が可能
武装は120ミリカノン砲二門と40ミリ四連装ミサイルランチャー二基
【ザウエル@機甲界ガリアン】
古代アースト文明が主役メカ(ガリアン)に対抗する機体として製作した機甲猟兵
武器は回転剣と鞘を兼ねた盾のみという潔すぎる機体
足の裏にローラーダッシュ用のホイールを持ち高速戦闘を得意とする
【レブラプター@ゾイド・ゾイド新世紀/ゼロ・ゾイドフューザース】
型式番号EZ−027
ガイロス帝国が開発した量産型小型ゾイド
アニメシリーズを通してのヤラレメカだが「ゾイド」51話で主人公が乗った機体は見違
えるような強さを見せており本機の持ち味である高い機動性と格闘能力を最大限に引き出
せる技量を持つパイロットが乗ればかなりの活躍ができる
アニメ版ではオプションのビーム砲を装備していたがここはあえてオモチャ版と同じ火器
無し仕様で参戦
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