味方と敵






 ブチッ
「はっ!」
 にいむらを追っていたセルゲイ(08番)のシューズの紐が切れた。
「くそ!」
 勢いよくにいむら(31番)を追ったのはいいが、途中ですっ転びそうになってはじめて気が付いた。
 いつの間にか右足のシューズの紐が全て切れていたのだ。
 そして今今度は左足のシューズの紐が切れた。左足はこれで2本目。
 シューズの紐を直そうとゆっくり腰をかがめるが慌てて跳ね起きる。
「あぶない、危うく膝をつく所だった……」
 この島で膝をつく事は死を意味する!
 それは自分が一番良く知っているハズだ。
「しかし不吉な……知り合いのコテハンに何かあったって言うのか……」

(単に安物のシューズなだけですよ)
 セルゲイの後ろの物陰に隠れていた名無しさんだよもん@誤植指摘(50番)は心の中で呟いた。
 さて、どうする……一応潜在味方と位置づけた二人、瀬戸かセルゲイの内どちらかであろう人物は見つけたが声がかけられなかった。
 一瞬本当にあのコミケブースで見かけた人物か我が目を疑った程の凄まじい変わり様だ。
 周りに恐ろしい程の殺気を放っている。
 何か激しい、ある特定の、恐らく誰かに向けられた怒りから来る殺意だと思われる。
 狂気等から来る見境のないものでないのは幸いだが流石に近づきがたい。
 結局あの人もこのロワイアルの渦中にいると言うことだ。
(敵……敵か……味方以外は全て敵……)

 セルゲイが再び歩き出そうとした時そこに第三の人物が現れる。
「林檎っち……」
 先程までのセルゲイに勝るとも劣らない殺気をほとばしらせながら歩いてくる人物は間違いなく林檎(07番)だった。
「セルの旦那……」
 2人はお互いを確認した。
「林檎っち、無事だったのか」
 セルゲイが歩み寄ろうとする。
「ええ」
 生返事をしつつ林檎は考えていた。
(紙媒体企画ではうまい事やりやがって、しかも未だにクリーンなイメージのままでいるなんて、ムカツクんだよねアイツ)
(邪魔だな……ガキ共とやり合う前に軽く倒しておくか……)
(10歩……後10歩近づけば後方に配置した挨拶無用の絶対攻撃範囲にヤツが入る。)

 一方名無しさんだよもん@誤植指摘は見ていた。
 こっちがセルゲイであっちが悪名高い林檎か……ん、林檎の後ろに誰か隠れている、双子か?
 腕から何か出した、セルゲイからは恐らく死角で見えないんだろう、どうなってる、いやどうする。
 味方は、敵は、どっちだ?



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