輝く魔女を持つ男






「くっ……!」
 油断した。腹部を血で染めた名無しcd(30番)は、
 刺さったナイフを引き抜いて遠くに放り投げると、背を向けて逃げ出した。
 ――協力者を募ろうとしたが、相手が悪かった!
 自分の運との悪さと、考えの甘さを呪いつつ、名無しcdは必死で逃げる。
 ――なんだよ、この展開は! 俺はもうここまでなのかよ。総登場話数1話なのかよ!
 愚痴をもらしながらも必死で逃げる名無しcdと、それを追う、ひとりの男。
 彼は無表情で、名無しcdに追いつくと、どんと突き飛ばす。
 転等する名無しcd。そんな彼の前に、男はゆっくりと回り込む。
「くそっ」
 瞬間。
 立ち上がろうとする名無しcdの膝を踏み台に駆け上がると、
男は躊躇せずに己の膝を名無しcdの顔面に叩き込む。
 鈍い音がし、たまらず名無しcdは昏倒した。
 紫電一閃――まさに、輝ける技だった。

「全く。だから、自分は許可出してないって言ってるのに」
 ぶつぶつと文句を言いながら、にいむらたくみ(31番)は名無しcdに止めを刺す。
「もし人の作品を使うというのなら、報酬をだせってんだ」
 そう言い、名無しcdの荷物を漁る。
「お」
 100円ライター発見。
「……一応持っていくか」
 にいむらたくみは、貰えるものは貰っておく主義だった。

 すまんが改訂なら下の作品をおいて他にないだろう。だと?
 ハカロワ全867話中、何回読んでも理解出来ないのはこれだけだ。だと?
 だったら、戻って行ってやる。
 自分にはこの技――シャイニングウィザードがある。
 相手が膝をつかないと出せないのが難点だが、威力は十分。
 これで、生き残ってやる。

 ハカロワ総合スレ(紙媒体化)5の676の書き込み。
 その書き込みが、彼の闘志に火をつけたのだった。

【30番 名無しcd 死亡】
【残り 39人】

【にいむらの支給武器はコンバットナイフ】
【名無しcdの支給武器100円ライターはにいむらが所持】



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