決意
「誰です!」
俊敏に反応し麻酔銃を構える中条、少し遅れて瀬戸も振り返る。
「向日葵です、争う気はありません!」
鎌を放り投げ、両手をあげて戦意が無い事を示す。
中条は安心し、構えを解く。
「静かなる中条です。」
「瀬戸こうへいです。」
大まかな自己紹介を済ますと葵は尋ねる。
「ではしぇんむ〜達を倒す為に、仲間を探しているんですね?」
「はい、僕たちがひどい事をやってきたのはじゅうぶん分かっていますけど、やっぱりこんなのおかしいです。」
とても悲しい目をして言う。
そんな瀬戸をみて、葵や中条も悲しい目をする。
「だったら言わなければならない事があります!」
先ほどとは打って変わって真剣な表情に変わる。
「なんでしょう?」
真剣な眼差しで見つめられた二人は同じく真剣に聞き返す。
「セルゲイさんを探すと言っていましたけど、それだけはやめたほうがいいです!
あの人は・・・呼びかけに答えた人を二人も殺したんです!
セルゲイさんがあんな人だったなんて・・・」
二人は何を言われたか一瞬では理解できなかった。
セルゲイさんが・・・マーダー?
あの人が、あの人に限ってそんな事をするわけがない!
「な・・・何を言ってるんですか?葵さん。そんな冗談やめてくださいよ。」
瀬戸は苦笑しながら言う。
「嘘じゃありません!二人の死体に向かって『……逃がしはしないッ! 決着をつけてやるッ!』って言っていたんです!」
嘘だ・・・。
僕は彼と共に仕事やメールもしてきた・・・
すくなくとも彼はそんな事をする人間じゃない!
知り合ってからそんなに時間は経っていないけど、それだけは分かる!
「う・・・嘘だぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
瀬戸は葵が投げ捨てた鎌をすばやく拾うと葵に向かって切りかかる。
突然の攻撃に葵はとっさに避けようとするも左肩を裂かれる。
「きゃぁっ!」
血が大量に飛びうろたえる葵。
再び切りかかってくる瀬戸から逃げようとするも足が震えて、転んでしまう。
その隙を逃さず鎌を振り下ろす。
今まで呆然としていた中条だが正気に戻ると急いで駆け出す。
「やめるんだ、瀬戸さん!」
ズシャァァァッ!
鎌は葵の首を捕らえていた。
中条は間に合わなかったのだ・・・
呆然とする中条をよそに瀬戸は膝をつき泣く。
「嘘だよ・・・そんな事あるわけないですよね、セルゲイさん・・・?」
「瀬戸さん・・・」
瀬戸は泣いた、ここに来て初めて泣いた。
目の前で人が死んでも、島に放り出され一人で恐怖に震えていた時すら涙が出なかったのに・・・
「中条さん、僕、決めました!」
しばらく泣いて涙も枯れた頃、瀬戸は立ち上り言った。
「僕はセルゲイさんを探します、そして彼女の言った事が本当なら・・・」
中条はゴクリと唾を飲み込む。
「僕がセルゲイ氏を殺します。」
それは時代を見たものの持つ、男の顔だった。
「分かりました、僕も付き合います。
もともと協力者を探すつもりだったのですから・・・」
そこに残るは、一つの死体と、二つの決意だった。
【39:瀬戸こうへい セルゲイがマーダーになっていたら殺すことを決意】
【40:静かなる中条 協力者を探しつつ、瀬戸に付き合う】
【34:向日葵 死亡】
【残り38人】
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