最終兵器彼氏






 静かな絶壁の崖の底から、もう逃げちゃいかがとどす黒いオーラが渦巻く。
 にいむら(31番)にシャイニングウィザードを食らって転落した、林檎(07番)だった。
 地面に這いつくばっていた彼は、意識を取り戻すとがばと起き上がると、
屈辱的な仕打ちに、拳をわなわなと震わせる。
「……今のは痛かった……痛かったぞおおおおおっ!!」
 林檎が、咆えた。
「ゆ、許さん……絶対に許さんぞ工房ども! じわじわとなぶり殺しにしてくれる!!」 怪我はしているが、致命傷ではなかった。
 生い茂っている木々がクッションとなって、彼の身を救ったのだ。
 プライドの高い彼は、高校生連合に不覚を取ったことが許せなかった。
「クズが……っ! 草の根分けても探し出してやるっ……!」
「……それは出来ないんですよ。あなたはここで死ぬんですから」
 怒髪天を突く形相の林檎は、その声に振り返る。
 銃を構えた男が一人。
「内閣特別執行委員会直属 特務機関CLANNAD司令 Kyaz……」
 男――Kyaz(22番)は微笑む。
「あなたを殺す男ですよ」

 幾分、冷静さを取り戻した林檎は、不快な目をKyazに向ける。
 そして、突然笑い出す。
「あぁ。あの最後の最後で、わけのわからない組織を介入させた挙句、
まだ発売していないゲームのキャラの話を使ってスレが荒れさせた駄コテか」
「……殺す!」
 Kyazはブチ切れた。――人間誰しも、触れられたくない部分がある。
「せいぜいあの世で咆えてろ!」
 そう言って、Kyazは引き金を引く。――銃声が轟いた。

「じゃあ、これは戴いていきますか」
 Kyazの支給武器、コルトパイソンを奪うと、自分の支給武器に声をかける。
「さすが。あなたは良い仕事してくれますね」
「え〜い、感謝不要だというのに。俺は林檎氏スキーだから当然のことだ」
 支給武器――林檎と瓜二つの男が笑う。
 コードネーム『私に挨拶無用!』。全身に武器を内蔵したこのアンドロイドは、
林檎氏に支給された忠実な下僕だった。
 先程は、ガキとあなどって出しそびれたために不覚を取った。もう、油断はしない。
「さぁ、行きますよ。あのガキどもをくびり殺しに」
 手首に仕込んだマシンガンをしまいつつ、『私に挨拶無用!』は困ったような顔をする。
「マナーさんか。HPのあの日記さえなければ好きだったのに……」

【07:林檎 怪我は軽傷 アンドロイド『私に挨拶無用!』と共に活動開始】
【22:Kyaz死亡】
【残り42人】




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