パニッシャーと嘘とエキセントリックガール






 パニッシャーを背負って一人格好良くポーズを決める俺の背後で物音がした。
「誰だ!」
 振り向きざまにパニッシャーを構える。あれ? これってイミテーションだっけ?
 重いけど本当に撃てるのか? どうする! 殺るか!
 だが現れた人影は襲いかかってくる様子はなさそうだった。
 足もとまで覆うような黒いコートをかぶった小さな人影。
 深くフードをかぶっているのでこちらから顔は見えないが向こうはこちらを凝視している……様な気がする。
 焦る俺を後目にそいつはすっと手を挙げて何やら動かしはじめた。
 最初は何をしているのかさっぱりだったがよく見るとそいつの後ろに移った影を見て気がついた。
「きつね……えーとネコか? ……カラス……さ、里村茜」
 影絵だった。そいつの手は様々に形を変え最後は里村茜まで作り出した。
「……違……ぽんぽこぴーのひよひよ……」
 何か言ったみたいだが小さい声で聞き取れなかった。

「オーケイ、敵意はないみたいだな。こっちもやり合う気はねーんだけど、とりあえず顔でも見せてくれよ。アンタ誰だい? 俺はL……」
 構えたパニッシャーをおろしつつ俺が見たのはフードの中から現れた真っ赤な髪の可憐な少女だった。
「……わ、私の髪……目立つから……に、24番……赤目……です……」
 その微かなたどたどしい声を聞きつつ俺の頭の脳味噌は40倍速のCDよりも素早く回転していた。
 やばいです(キターー(・∀・)ーー!! )。
 可愛いです(末莉程じゃねーけどな)。
『。』嬢よりロリーです(あれには騙された)。
 マジ惚れ(けど待てよ)。
 赤目って俺ことL.A.R.に恨みを持つコテハンじゃねーか(浩平殺しやがって)。
 嗚呼でも仲良くなりたい(けどあの茜は……)
「だがそれとこれは別だ!」
 いかんつい口に出してしまった(あ、ちょっと後ずさった、でもそんな仕草も萌える)。
 やべぇぞ、向こうはこっちが名乗るのを待っているYO(どうする? L.A.R.って名乗るの不味くないか?)。
 嫌われたくねーなー(ここは誰かになりすますか?)
 誰だ! 誰なら好感度抜群だ(挽歌か、やっぱ挽歌か! あ、でもあの人奥さんいたっけ?)。
 ハカロワの良心セルゲイってのもアリか(林檎だと腹グロだと思われそうだし)。
 YELLOWかダンディで笑いを取るべきか?(第一印象が肝心!)
 ええい!

「俺はいつかだ」
 一瞬の沈黙。
「…………『蒼天の雨』……好き……かも」
 彼女はちょっと頬を染めて呟いた。
 俺は心の中でガッツポーズをとると同時に咄嗟に嘘をついてしまった自分を激しく嫌悪した。
 それからふたりして隠れるのに良い場所を探す事になった。
「赤目氏は誰かー会いたいコテハンとかはーいる……のかなぁいますか?」
 思わず変な発音になってしまう日本語を駆使して尋ねみる。
「……命さんに……か、影絵のお礼……後L.A.R.氏に会ったら……」
「あ、会ったら?」
「…………半殺し」

 さ、ゲームはまだまだ長いよ。多分。多分ね。

【04:L.A.R. いつかを騙る】
【24:赤目 L.A.R.と行動開始】



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