焚き火の前で






 パチパチと、焚き火の弾ける音が林の中に響く。
 命とKyazの2人は、その周りで身体を温めていた。
 本来なら、格好の目印となる火を焚くのは好ましい事とは言えないのだが。
 命はふとkyazの方を見やる。
(まさか暗闇が怖いとはなぁ……、ますますうぐぅじゃないか)

   まぁ、無理も無いかもしれない。
 彼女がハカロワに書き手として参加したのは、確か少年や往人が死んで神奈との最終決戦が始まった辺りだ。
 初期から参加し続け、参加者を殺し続けた自分達に比べれば、耐性が無いのも無理の無い所である。
 そう考えると、急に彼女に申し訳なく思った。
「……悪いな」
「何がです?」
「いや、こんな事にまきこんで…な」
 不思議そうな顔を向けたkyazに命は言葉を続ける。
「ハカロワで参加者を殺しまくったのは俺達初期から居た有名コテだ。
 本来なら奴らの復讐の矛先は俺達だけで十分なはずだったんだ。
 それなのに、ロワイアルの人数合わせの為にアンタ等までまきこんでしまって……」
「ちょっと待ってよ」
 片手を前に出して制止する。
 その顔は少しだが、怒っているように見えた。
「ボクは確かに1人も殺さなかったし、話を書いたのも最後の方だけだったよ。
 でも、ボクだってハカロワが好きだった。
 殺し合いは…余り好きじゃなかったかもしれないけど。
 だけど、ハカロワの雪見先輩は最高だった。祐介美汐みたいなカップルに憧れた。
 自分もこんな話を書きたいと思った。
 それだけで…十分彼らからみたら憎悪の対象になると思う。だから……余り自分を責めないで」

「………ああ、そうだな」
 ガシガシと頭をかく。
 自分がどうかしていた。
 ハカロワで最も作品を挙げた書き手として、少々奢っていたのかもしれない。
 あの人数も減り、勢いも衰えた終盤になって参加するという事はそれだけで十分ハカロワ好きという事なのだ。
 単に時期が悪くて数を残せなかっただけでそれだけを判断基準にする事はできない。
「でも、だからって死んでもいいって言ってる訳じゃないんだよ。
 まだ、やりたい事一杯あるんだもん。
 それは他の人も一緒だと思う。だから、皆わかってくれるはずだよ」
「そうか……」
 皆で生き延びる。
 それはすでに無理である事は命には解っていた。
 目の前の少女の言ってる事は奇麗事である事も。
 でも、それを言って彼女を傷つける気は無かった。
 もし、どうしようも無かったら、汚い事は自分が背負ってやろう。
 それだけの価値が少女の笑顔にはあると思ったから。

「そういえば……」
「何だ?」
「命さん、ボクの書いた物の中で一番印象に残ったのなんですか?」
「………コップの中の嵐」
「!?」
「秘密警察CLANNAD」
「そ、それは……」
「ステイツハクオロ、ミスター古河」
「うわぁぁぁぁぁん、命さんなんて嫌いだぁ〜〜〜!!」
 ……やっぱりからかうのはやめられなかった。



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