小悪魔の提案
「う〜ん、やっぱり入れないね…」
昇降口の前でマグナムは一つ溜息をついた。
闇にまぎれてここまで来たはいいが、昇降口には鍵がかかっていたのだ。
まぁ、狙撃者の視点から見ればある意味当然の選択ではあった訳だが。
そんな事を考えてる内に、学校の周りを見ていたシイ原が戻ってきた。
「どうだった?」
「駄目だな、1階の窓には、全部鉄格子が入ってやがる」
どうも、この学校はキャラロワ仕様らしい。
なるほど、狙撃には格好のポイントだ―――
「で、どうする?」
「ん〜…この分じゃ、中に入っても罠とかあるかもしれないねぇ……という事で」
「?」
マグナムはシイ原の肩に手を置くと、にっこりと微笑みながら言葉を発した。
「君の中華キャノンの出番だよ、シイ原君」
「……すまん、もう一度言ってくれ、誰が何で何をするって?」
「君が、中華キャノンで、この学校は破壊するんだって」
「何故、そーなる?」
「解ってないなぁ……いいかね、シイ原君」
眼鏡もかけてないのに、眼鏡をくいってあげるポーズを取る…楽しんでないか、この女?
「この学校に立てこもってる人間は、とても狡猾で賢い人間だとは容易に想像できるわね?
そういう人間の裏をかくには、その人間の予想外の武器、つまりこの場合中華キャノンによる奇襲……って」
いつの間にか、シイ原は背を向けていた
「……帰る」
「こらこらこらぁ、このままほっといたら殺されるんだよ、それでもいいの?」
「…お前、俺で遊んでるだろ?」
シイ原は思う。確かにこの女の言ってる事は一見正論だ。
だがその実、俺のあのポーズを見たいだけなのではないか?
「そんな事ないよぉ、私は真剣に言ってるんだよ? この島から生き延びる為に―――」
そう言って、彼女は祈りのポーズを取るが、シイ原にはその背中に小悪魔の羽を見たような気がした―――
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