復讐者
「ちくしょう、何でこんな事にっ…!」
荒門(27番・男)は思う。
何故自分がこんな目に合わなければならないのか。
まぁ、主催の言いたい事は解らないでもない。
自分達を殺した書き手達に復讐したいと言うのは当然だろう。
だが、だからと言って何故自分が選ばれなければならないのか。
「俺は本編ではたった3話しか書いてねーんだぞ、畜生!!」
「ですが、アナザーになった話で4人も殺したでしょう?」
ビクっと震えて恐る恐る声のする方に振り向く…。
そこに立っているのは亜麻色の髪の少女。
葉鍵板住人なら彼女の事を見まがうはずが無い。
「里村…茜…」
馬鹿な、キャラ達は主催では無かったのか?
それとも、やはり自分達の手で書き手達に手を下すべく島に降りてきているとでもいうのか!?
そんな荒門の動揺をよそに、彼女の口は彼の予想だにしない言葉を紡ぎだした。
「脱出の方法があります」
「な…?」
「私達の中にも、こんな殺し合いはしたくないという人も大勢居るんです」
余りに予想外の言葉に荒門はただただ呆然としようやく言葉を搾り出す。
「い…、いいのか? 俺達を恨んでるんじゃ…」
「こんな事しても、無意味ですから…」
寂しそうに微笑む茜を見て、荒門は激しく後悔した。
自分達はこんなキャラ達に殺し合いをさせていたのか…。
「すまない…」
「いいんです、それより脱出方法ですが…。主催側が聞いているかもしれないので、耳を貸してくれますか?」
「あ、ああ…」
これで、この島から脱出できる。
この狂った島から…。
その瞬間、彼の腹に熱い衝撃が走る。
「…な?」
自分の腹にナイフが押し当てられている…。
「…本当に、許された等と思いましたか?」
「き、貴様…だましたのか…」
「ええ…、もっとも…」
崩れ落ちる荒門に、彼女は冷たい微笑みを向ける。
その時彼は始めて気付く、彼女の首に主催ならありうるはずの無い物…首輪が存在する事に。
「私は『里村 茜』ではありませんが…。さて、苦しいでしょう? 楽にしてあげます…」
その瞬間、ナイフが荒門の首に突き立てられた…
「しかし、この手は予想以上に使えるようです。…まぁ、首輪は問題でしょうが」
油断を誘うには十分だろう。血の付いたナイフを拭いながら、赤目(24番・女)は息をつく。
自分の支給品は亜麻色のカツラとONEに出てくる制服…。
最初は一体何かと思ったが、説明書を読み合点がいった。
「里村茜なりきりセット」
ごていねいに、ハカロワで茜の初期装備であったナイフまで付いている。
要するに、主催の格好をして参加者を油断させ、殺していけというのだろう。
「しかし、私の演技力も大した物です。これなら、例え茜狂いのL.A.R.でも…」
そこまで考えて歯噛みする。
自分の書いた茜が浩平を殺すエピソードを萎えと罵った彼の姿が目に浮かぶ。
一体何様のつもりか、彼女をマーダーにしたのは貴方だ。
それとも、彼女はマーダーで幸せだったとでも言うつもりか?
奴だけはこの手で殺さねば気がすまない。
それも最愛の茜の手にかかって死ねば、その絶望は計り知れぬ。
「貴方だけは…この手で殺します」
そう言うと赤目は荒門と自分のバッグを手に持ち標的を求めて森へと消えた…。
【27番 荒門:死亡】【残り33人】
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