死を背負う男






 まったく願ってもねぇチャンスじゃねぇか。
 俺、ことL.A.R.(4番:男)は森を疾走していた。
 まずは出発地点からはなるべく離れる、このゲームの鉄則だ。
 ふぅ、もうそろそろ大丈夫か。
 俺は一息ついて自分の荷物を探る。
 まったく、この支給品を確かめる瞬間を
 この一種高揚感めいたものを自分自身が味わう事になろうとは。
 中に入っていたのは
 ピンクの傘。
 しかも御丁寧に白い水玉模様入り。
 ふっ茜好きの俺には似合いの品か……
 ふ ざ け る な !
 奴ら絶対仕組んでやがる!
 地団駄を踏みかけた時、背後から誰かが歩いてくる足音。
 現れたのは笑顔の似合いそうな細身の優男だ。
「あっ……L.A.R.さん」
 こいつは確か……林檎(7番:男)だったか……そうかハカロワを書いた量で順番が決まっていた
 みたいだったので、コイツと俺は割と近い番号だったのか……
「会えて良かった、L.A.R.さん」
「こっちに来んじゃねぇ!」
 俺は語気を強めて怒鳴った。
「! どうして、。嬢やゼルゲイの旦那、遙か(略)さんらチャット組を探して、皆で協力してここから脱出しようよ!」
「……それで皆を集めて灯台編を再現したいってか?」
「そ、そんな、そんなつもりは……」
「アンタは信用できねぇ」
「チャットで僕達はあんなに仲良しだったじゃないか!」
「いや、アンタの本性は見抜いてるつもりだ。アンタの腹はどうしようもなくドス黒い」
「…………やっぱり見抜かれてた」
 ヤツは舌を出して笑った。それはゾッとする様なとても邪悪な微笑みだった。
「ったく、ごちゃごちゃ五月蠅いんだよね」
 懐から素早く滑るように拳銃を取り出しヤツは俺めがけて発砲した。
 まったく、銃撃戦萎え〜、とか言ってるヤツにんな物騒なモノが渡るとは。
 支給品も含めて全てが仕組まれてるとしか思えねぇぜ!
 俺は真横に、ほとんど転がる様に飛び避けてから立ち上がりきびすを返して全力で逃げ出した。
 背後でヤツのヒステリックな笑い声がこだまする。
「夜はまだまだ長いよL.A.R.! また会おう!」
 勝手に吠えてろ!
 そう、俺はここで、こんな所で死ぬわけにはいかない、俺にはやる事がある。
 そうだろ彗夜? 
 オーケイ、計らずとも舞台は用意されたってわけだ。
 決着を付けようぜ。
 テメェが行くのは球技大会じゃなくあの世だ!
 俺が送ってやる。
 この時をどんなに待った事か。
 だから貴様も、俺に会うまで、絶対に、死ぬんじゃねぇぞ!
 俺は闇の中を後ろも見ずにただ全力で走り抜けた。



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