疑心暗鬼
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
ナナツさんだよもん(女・37番)は森の中を一人駆けていた。
(何で…何で、あんな簡単に人を撃ち殺す事ができるんでつかっ!?)
彼女は森の中から111(男・5番)、林檎(男・7番)の二人の男の様子を見ていた。
どうやら親しげに話しているようだ。
(最も、親しげだったのは専ら林檎の方だったのだが、遠目から見ていた彼女は気づかなかった)
これなら自分も…と思って出て行こうかと思った瞬間だった。
いきなり林檎が銃を取り、111を射殺したのは。
そうだ、これがロワイアルなのだ。
さっきまで親しげに話していた2人が突然殺しあう。
誰も信用等できない。
ハカロワでは次々とコンビなりパーティが出来ていたが、それは葉鍵キャラだからだ。
むしろ、この島では参加者のほとんどが月島瑠璃子で、忍者南だと思うべきだ。
笑顔で人を騙して近づいて、隙を見て人を殺すのだ。
(誰も…信用できないんでつよ…でも…)
もし、彼女に銃クラスの当たり武器が支給されていれば、恐らくこの時点でゲームに乗る道を選んでいただろう。
しかし、彼女に支給されたのは、はずれ武器と言ってもいいなりきりセット一式。
これではとても、マーダーとして生き残れるとは思えない。
結局、疑心暗鬼に捕らわれつつも、未だ最終的な決断は下せない。
決めたのは、ただ出会った人間を信用しない事だけ……。
彼女は知らない。
自分の支給品の内の一つであるハサミに毒が塗られている事に。
それは、瑠璃子や南の武器に付属していたそれと同じものであった。
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