マッド・ティー・パーティー
「ここ、座っていいですか?」
努めてにこやかに、友好的な態度を押し出して、林檎は111を懐柔しようとしていた。
「構わないけど…その銃は、少し遠くにおいて欲しいかな」
「あっと、こりゃ失礼。順序が逆でしたね」
「そうかもな」
「厳しいなー、こっちだって怖いんですよ?」
なあに、他人と仲良くなるのは得意なほうだ。
軽快なトークに、相手の自尊心をくすぐるようなおべんちゃらを織り交ぜてやればいい。
「111さんの武器は、なんなんですか?」
「反射兵器…」
「え?そんなバカなもんが…いや、あわわ、えーと、そんな凄いもんが、実際にあるんですか!?」
「…を倒すために最適な武器だ…ってお前、今バカって言ったか?」
「いえいえいえいえいえ言ってません言ってません。つまり僕の銃では倒せない相手を、111さんなら倒せると!」
「ふふふ当たり前だ。倒せないわけないだろう。塩酸水だからな」
あとは、自分の腹の底を見せないように、建前を大きく掲げておくだけだ。
「どうです、共闘と行きませんか?僕らの武器が揃えば、生き残る可能性はぐっと上がりますよ!」
「共闘か…だが俺には反射兵器の破壊という使命がある。あれを生み出したのは俺だ。責任がある」
「んなもん本当にあるわけネー…」
「なんか言ったか?」
「いや、あはは、ゲホゲホ、ちょっとのどの調子が悪くて。このお茶貰っていいですか?」
林檎は傍らの水筒に手をやると、ひと口飲もうと傾けた。
「お茶?…ばっ馬鹿!それは…!!」
酸性洗剤だった。
「ぐあぁっ!酸っぺぇ!じゃない、痛ぇ!熱ぃ!!何飲ませやがるんだ、騙したな、この野郎!」
喉の痛みに引きつりながら、林檎は水筒を111にぶつけると離して置いた銃の所へ飛び込んだ。
「だ、騙したもなにも、お前が勝手に…」
タンッ!
乾いた銃声が響き渡ると口論の喧騒は収まり、静寂が訪れた。
「ち…使えねえ奴だったぜ」
林檎は悪態をつくと、111の鞄を漁りだした。あまり期待はしていなかったが、やはり食料のほかに
ろくなものがない。
そんな林檎の手に、意味深なメモが残された。
「これは…脱出への鍵とか!?おいおいおい、思わぬ収穫だったりしねーか?」
『やれるものなら、やってみろ』
「……???」
立ち尽くす林檎の後ろで、酸性洗剤はみるみる水筒から流れ出し、地面に吸収されていった。
【111死亡】
【残り22人】
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