思惑外れ






「ちぃっ、一体どないなっとんのや!」
 訳あり名無しさんだよもん(男・25番)は突然降って来たガラスの雨から身をかわす。
 どうやら百貨店でも戦闘が行われているらしい。
(どないする!? このまま喫茶店の奴らを追うか、それとも百貨店に向かうか?)
 数瞬考えた後、彼は百貨店の入り口に向かって走り出す。
 逃げていった連中には大した戦闘力は無い。
 ほとんど抵抗しなかったのがその証拠だ、いつでも殺す事ができるだろう。
 それよりも、今は戦闘に疲れているだろう百貨店に居る連中を狙う。
(生き残るのはワイや! 皆ぶっ殺したるわ!)

 百貨店の正面入り口の陰に身を隠し、中の様子を伺う。
 食料品売り場だろうか。
 肉や野菜、様々な食べ物が台の上に並んでいる。
 先ほどの爆発音とはうって変わって店内は静かだ。
 じっと待っていると、一人の少女が視界に入る。
 左手に盾、右手に持っているのは…鉈だろうか?
 よたよたと頼りなげな足取り、よほど疲れていると見える。

(まだやまだ、もう少し近づいてから確実にしとめるんや…)
 今まで考えなしに銃を撃ち、ことごとく逃がしてきたのだ。
 今度は確実に仕留められる距離まで、誘き寄せる。
 女が近づいてくる。全く警戒している様子は無い。
(……今や!)

 そして飛び出そうとしたその時。

 彼の耳に何かの落下音が響いた。
 背筋に悪寒、とっさに身をかわす。
 恐らく爆破で脆くなっては居たが、今まで落ちずに耐えていたのだろう。
 拳大のガラス片が彼の二の腕を浅くではあるが切り裂いた。
「な…!?」
 さらに、身をかわした事がドアの前に飛び出した事になり女の視界に自分の姿が入ってしまう。
「な…なんだよ!?」
(っ…畜生がぁっ!!)
 銃を構えなおす。
 そして、彼はショットガンの引き金を引いた―――

【訳あり名無しさんだよもん:二の腕にガラスによる切傷】
【名無しさんなんだよ:ショットガンによる負傷については、次の書き手にお任せ】



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