情報遊戯
デパートの7階を細心の注意を払いながら進む二人――いつか(男子10番)とMIU(女子15番)。
――「エレベーターを使うのは危険すぎる」
――「非常階段で待ちぶせされていたらどうするの?」
――「この規模のデパートなら他にも階段があるはずだ。まずはそれを探す」
男子トイレの中でそう話し合った二人。目的のもの――もう一つの階段――は
あっさりみつかった。
「……そりゃそうだよなあ。デパートといえばエスカレーターがあるよなあ」
「秋葉原にはないところもあるけれどね」
そこが一般的にいう「デパート」と同じものだとしていいかは微妙だけど――
そうMIUはつぶやく。
「さてここで問題だ。僕達はどうやって下に降りればいいと思う?」
「エスカレーターからは……目立ちすぎるわね。だったら非常階段が正解?」
「だがそれはRiver.さんを殺した奴も考えているだろうね。僕達はその裏をかきたい」
「でもそれは相手が一人だけだった場合でしょ? 相手が何人もいたらどうするの?」
「その可能性も含めて相手の裏を……っ!?」
物音。影に身を隠す二人。フロアに人の気配は……ない。
「なんだ……一体?」
「落ち着いて。こんな時は焦った方の負けよ」
――ウイィーン……
再び響く音。それは彼等の上の方から聞こえていた。そちらへ目をやる二人。
そこには……
「監視カメラ……っ!?」
デパート4階。非常口の扉の外側にその部屋はあった。
扉には「警備室」というプレートがついている。
室内には16個のモニター。それぞれ各階のエスカレーター及び
非常階段に続く扉、そして一階の正面入口と裏口の映像を写しているようだ。
エレベーターの様子がわかるモニターが一つもないのはあざといというかなんというか。
感想スレRの142(男子28番)は、無表情にモニターの中の1つを見ていた。
モニターには2人組の男女の姿が写っている。
プチッ
いきなり全てのモニターの電源が落ちた。
だが感想スレRの142は微塵も動揺せず、懐から財布をとりだす。
その中から大きめのコイン新500円硬貨を取り出して、
なにやら張り紙がしてあるところへ向かった。
「あなたに驚きの風景を!!
5分100円
100円硬貨、500円硬貨使用可能
もしものときは近くのスタッフまで御連絡を。
イベントスタッフ 牧村南」
張り紙の横の、硬貨投入口へコインをいれる。
カラカラカラーンッ……。
ごく僅かだが、初めて感想スレRの142の表情がゆらいだ。
はじかれた500円玉。
この機械はまだ新500円硬貨には未対応のようだった。
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