理不尽






「あやまりたかったよ、Riverさん……いや、相棒」
いつかは力なく笑った。笑わざるを得なかった。

Riverの死を告げる放送を聞いてから、いつかはトイレに座り続けたまま動かない。
また、MIUは壁に寄りかかり、ずっと黙っていた。
「ねえ、いつまでここにいるのよ」
「もう少しだけ……」
「現実見なさいよ! もう死んでるのよ! 殺されたのよ! 生き返らないのよ! 次はあたしたちの番かもしれない!」
「……」
「だから……ここから離れようよ」
その叫びは感情をむき出しにしたものだったが、それほど大声というわけではなかった。マーダーを恐れての行動である。
その問いに対する返答をいつかは返した。
「投票企画って覚えてる?」
「え?」
「ハカロワが完結してさ、その時できた企画。
最初は部門わけとかで、てこずったけどさ、結構盛り上がったんだよ、それ。僕も投票したし」
MIUは意味不明をそのまま表したような顔をしている。
口をはさみたいのは山々だったが、いつかの雰囲気がそれをさせてくれない。
「でも立ち消えになったんだ、いつのまにか。集計人は消えるし」
そこらへんの噂は聞いたことがある。集計人が部門の多さにまいって逃げたという噂だ。
「確かにさ、消えたRiverさんにも責任があるよ。でも、一番の原因は」

「僕らだ」

「だってそうだろう? 投票企画そっちのけで次企画のことなんて話はじめて、みんなほっぽりだしてしまった! 
こんな僕らがRiverさんに対してどうこう言う資格はないんだ!!」

「…っつ」
その剣幕は少女を怯えさせるには十分であった。その事実に気づき、がっくりと肩を落とす。
「わかってたよ……誰にも悪気はなかったことや、それぞれの次企画の人達だって一生懸命頑張ってることぐらい」
力なくしゃがみ込む同時に呟いた。
「……いつか、謝ろうと思ってた。僕だけでも」

この一連のいつかの行動ははたから見たら身勝手そのものだろう。
自分の心情ばかりを吐露して、無関係の女性のMIUにそれを丸ごとぶつけてしまった。
それに大声を出すという致命的ミスも犯した。
ハカロワで言うなら祐一なみの行動であろう。
でも、それが普通。
いつかは葉鍵キャラでもスタッフでもないただの人間なのだ。
この行動は理不尽であっても極めて普通の人間の行動である。

もちろん、MIUも気づいた。いつかが本当は弱い人間であることを。
だが、その弱さゆえに、彼に愛を感じてしまった。

MIUも人間だったのである。



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