滲みでる悪意
「ボクは絶対にあきらめないよ……。あきらめるもんかっ。
みんなと力をあわせて乗り切って……そして絶対に帰るんだ!」
Kyaz(女子22番)は森の中を進んでいた。手には支給品たる人物探知機。
それは恐怖と疲労のためか、カタカタと小刻みに震えている。
先程、やっとの思いで他の参加者をみつけたが、みんなで力をあわせて
主催者に立ち向かおうという説得は徒労に終っていた。
「なんでみんな気付かないんだよっ。例え最後まで生き残っても、その人も
絶対……、絶対に殺されちゃうのに………」
彼女の考えが本当に正しいか、それは主催者にしか分からない。
だけれど彼女の奇妙に冷静な思考には確信があった。ゲームのスタート時に
往人がいったこと。
――「ルールは知っての通りだ。だが俺達はあの管理者達みたいなヘマはしない。
―― 最後の一人まで――殺し合え。以上、何か質問はあるか?」
彼は言っていない。最後に生き残った人物がどんな運命をたどるか……
それはキャラロワにてあの高槻でさえ助けてやると言っていたことなのに。
総合するにこれは……彼女の思考は告げる……最後まで勝ち抜いた人間には
最悪の未来がまっているのだと。
生き残るには、別の人と合流して力をあわせる……のか?
「そ、それでいいはずなんだよ。絶対に!!」
何度目だろうか。彼女が押し寄せる恐怖に必死で耐えきったその時だった。
「あっ……」
探知機の端に光点があらわれた。それも一つではない。無数。
「なんだぁ。力をあわせようとしてたのはボクだけじゃなかったんだ。よかった……」
先程からの恐怖はなりをひそめ、足が軽くなる。彼女は光点の方へと向かった。
釣り橋があった。そういえば……猪名川由宇が深山雪見に殺害されたのも釣り橋
だったな。不吉な事を思い出したKyazはあわてて人物探知機に目をやる。あやしい
反応は……ない。光点の集合は釣り橋から50mくらい上流にある簡素なダム
――いやダムと言うよりは水を留めておくためだけの水門といったところだろうか――
そのむこう側だった。
(あれっ…?。そこってお水がたまっているんじゃないの?。もしかしてみんな水浴び中?)
2ch葉鍵板。そこの住人の大半は男だろう。彼等のサービスシーン……
「えっ、あっ、いや。違うよ。ボクは田代神みたいに覗きたいんじゃなくて、ほら、
はやくみんなと合流した方が都合がいいでしょ、ボクじゃ神になれないし、ねっ」
ほのかに顔が赤くなるのを感じながら、でもやっぱ現実見たら
幻滅しちゃうんだろうなあと思いながら彼女はおずおずと水門をまわりこんだ。
「どういうこと……だよ……?」
そこは小学校のプールの大きさの池があった。生け簀といったほうが
いいかもしれない。その中には底の様子がうかがえないほどの数の魚が泳いでいる。
人は一人もいない。あるのは奇妙な台とスケッチブックが一冊。
そこにはこう書いてある。
――ボタン一つで水門は開くの
次のページ
――水門の先はあの島を真似してつくった人工の川なの
次のページ
――でもこの川は、どちらかっていうと池みたいな感じなの
次のページ
――だから誰かを川に落しちゃえば、生け簀の中のおさかなさんが大活躍できるの
そして、最後のページ
――おさかなさんの名前は、ピラニアっていうの
2ch危機でピラニアが減ってまた〜りしたね
ピラニア等に耐えてよくがんばった。感動した。
またピラニアが増えてきたな
書き手さん達にの30の質問
20.いわゆる”ピラニア”について当時はどう思われましたか
フラッシュバックする彼女の記憶。
「これも参加者だって……いいたいの…?」
ぱしゅ……。水面をピラニアがはねた。
その胴には、御丁寧にも彼女がしている首環と同じ様な物が、つけられていたのだった。
前話
目次
次話