揺れる灯火






てっきり自分のいる六階で止まると思ったエレベーターは、六階を素通りして最上階に行ってしまった。
(やっぱり階段から?)
MIUはできるだけ気配を殺し、階段に近づいた。
足音や人の気配はまったくない。
ここで階段から一気に逃げるほうがいいのだろうけど、、
MIUはそっと七階に上がった。
すると、エレベーターの前に男が一人、倒れている。
(死んでる?それとも罠?)
ポケットの中の手榴弾のピンに指を掛けつつ、観察する。
(敵だったら、殺すの?馬鹿みたいね、、)
踵を返し、階段を下りようとした時。聞こえてしまった。
すう〜すぴ〜

「コラ!」
倒れてる男の横っ腹に思いっきり蹴りを入れる。
「がはっ!!」
男は突然の衝撃にもんどりをうつ。
「あんた、馬鹿じゃないの?こんなとこでなに寝てんのよ!私が馬鹿みたいじゃない!」
「そん、、なこといわれても、、」
男は涙目で答えたのだが、その台詞にさらにムカッときた。

「なるほどね、、、」
話せる状態になってから、いつかはこれまでのことを話した。
自分の名前、死にかけていること、三途の川のこと、、
「それじゃあさよなら。」
話を聞くやいなや、MIUはすたすたと歩き出した。
「ちょ、ちょっとまてくれよ。」
寝たままの姿勢で女の人を呼び止めるって、すっげえはずいな、、
「何?」
MIUは首だけをまわして答えた。
「何って、、あいつ頼りになるやつだし、俺は今はお荷物だけど、、三人で行動したほうがいいじゃないか。」
「私は嫌よ。あなた達のこと信用できないもの。それに殺し合いはごめんだわ。」
「そんなこといってもさ、降りかかるノコノコは無限一アップしちまえってゆうじゃん?」
いつかは何故かまじめな顔をしていた。
「ハア、、第一、あなただって利用されてるのかも知れないのよ。あなたを使ってこのビルの敵の有無を確かめたのかもしれないわ。」
「そんなわけ、、」
「じゃあ何でそのお友達は上がってこないのかしら。エレベーターは止まったままよ。」
確かに、エレベーターはいつかをこの階に運んでから沈黙を守っている。
「きっと階段で、、鍛えたいとか、、」
いつかの語尾が小さくなっていき、やがて沈黙が訪れた。その時。
エレベーターは下にぐんぐん降りていった。
二人は黙って標示を見ていた、、が、
標示は三階でとまり、そしてぐんぐん上ってきた。



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