廃工場の前で
「…なんなんだ、ここは?」
33番、#4-16は小さく呟いた。
目の前には大きな建物があった。見るからにどうやら工場のようなのだが、もちろん稼働しているような気配など何処にも無い。
#4-16は一晩歩き続け、この場所にたどり着いた。太陽が顔を出し、新しい1日の始りを告げていた。清々しい朝。だが、体は一晩歩き続けた所為でかなり消耗していた。
この工場で少しの間休憩できるだろうか、上手く隠れることが出来る場所があるかもしれない。そう考えて入り口はないか探しているところに、例の定時放送が流れた。
どうやらやる気まんまんの人もいるみたいだね。
僕はどうするべきなんだろうかと#4-16考えた。
今までは偶然誰にも接触することはなかったのだけど、これからどうなるかなんて判らないし、もし出会ったとしても僕に戦う能力なんて無い。
頼りの支給品は蹄鉄だった。馬の蹄につけるヤツだ。
僕の名前が馬券っぽいからといって、この支給品は無いんじゃないかと思う。
鉄で出来ているだけに手にはめて殴ればかなりの深手を相手に負わせることができるかもしれないが、飛び道具を持った相手だと、近づくことすら容易ではないのだ。
服のポケットから#4-16はケースを取り出す。
そこに入ってるもの。田原成貴オリジナルサングラス<2001年モデル>。
眩しい太陽の光を遮るようにそれをかける。
彼の宝物だった。これを主催側に取られていたら彼は今頃主催者達のいる場所を襲撃していたかもしれないくらい、彼にとって本当に大切なものだ。
#4-16は廃工場の入り口によっていった。よくみると入り口の扉の近くの窓が割れている。
…もしかして、すでに誰かここに来ているのだろうか?
ここは確かに目立つし、誰かがここに来ていたとしてもおかしくはない。#4-16は考える。
問題はひとつだった。
その人間がやる気なのか、やる気でないか、それだけだ。
中からカタと何かが動く音が聞こえた。
恐る恐る#4-16は言った。
「…誰か…いるの?」
前話
目次
次話