学生二人






「ああ、いたいた。彗夜さーん」
 この状況からはおおよそ考えられない明るい声を出して、マナーは目の前方を走っていた彗夜に呼びかけた。
「あれ。マナー君じゃない」
 彗夜は足を止め振り返る。
「どうしたの。あんな大声上げて。危ないよ」
「それはそうですけどね。知らせておこうと思ったんですよ、一応」
 ふふん、と笑う。
「L.A.R.さんが彗夜さんの命狙ってます」
 告げると、彗夜は露骨に嫌な顔をした。
「え、何でよ。迷惑な話だなあ。ひょっとして茜のことまだ根に持ってるのかな」
「それ以外にないでしょう」
「粘着だねあの人。僕らよりよっぽど精神年齢低いんじゃない?」
 くっくっと笑う彗夜を見てどっちもどっちだと思ったが、当然口には出さない。
「それじゃ伝えましたよ。せいぜい気をつけて下さい。二人の対決見たいんですけど、邪魔になるのでやめときます」
「そんなの知ったことじゃないよ。向こうが勝手につっかかってきてるんでしょ。僕は知らない」
 あくまでも関わり合いにはなりたくないと思っているようだった。
「それならそれでいいですけど。そうそう、この島、教会がありますよ。お二人が決着つけるなら舞台はそこしかないですね」
「だから知らないよ僕は。今『。』嬢を探すので忙しいんだ」
 何気なく言った言葉。だが、マナーは聞き逃すことができなかった。
「へえ、彼女を。それはまた何でですか?」
 マナーの瞳の色が変わったことに、彗夜は気づかない。
「愛してるからだよ。僕にしか彼女は守れない」
 胸を張り断言する。それで、マナーの決意は固まった。
「そうですか、L.A.R.さんには悪いことをしましたね。どうやら彗夜さんは僕が殺すことになりそうだ」
「奇遇だね。僕も彼女を助ける為に、出会った人間は片っ端から殺すようにしてるんだ。二人でこの島を出て、球技大会で活躍する僕を彼女が見守る。そんな夢を叶えるために、ね」
「狂ってますね。そんな人を彼女に近づけるわけにはいきませんよ。僕は一人の書き手として彼女を尊敬してるんだ。あなたみたいな害虫を――」
 懐から銃を取り出した。
「放っとくことはできない」



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