狂気の証明
『やれるものなら、やってみろ』
彼が鞄を開けたときに真っ先に目に入ったのが、そう書かれたメモだった。
――ハァ? いったい何のことだ?
彼はいぶかしく思った。そして、その答えを求めるために鞄の中を漁る。
やがて、彼は自分の支給武器を見て愕然とした。
中に入っていたのは、赤や緑や水色といった数多くのチープなポリエステルのボトル。
彼は震える手でボトルの中身を確かめるためにラベルを見てみる。
『しつこいカビもこれ一本!』
『一が効く、二が効く、酸が効く!!』
容器以上にチープなコピーにげんなりしながらそのすべてに目を通した。
そこに共通して書かれていたのは『酸性洗剤、混ぜるな危険!』という文字だった。
この支給品と先ほど書かれていたメモとの関連性。その答えは彼にとっては明快だった。
かつて『反射兵器、強すぎ萎え〜』と感想スレが荒れたときがあった。
その苛烈な書き込みに彼は『反射兵器は酸に弱い』と指摘した。
だが、その発言は火に油を注ぐものだった。
『そんなこと、誰が分かるんだ!』
『あの少年に当たるんか?』
あの日を思い出し彼はメモを握りつぶした。
――ふふふ、そうか。そういうことか。
このメモは挑戦状だ。
誰かが反射兵器を持っている。
それをこいつで仕留めてみろと。そういうことだな。面白い!
見ていろ、あいつら! 俺が正しいことを証明してやる!!
111(5)は両手に洗剤を持ち、歩き出した。
その目には闘志と狂気を宿らせながら。
【111支給武器:大量の酸性洗剤】
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