とばっちり
「くそっ、ボクはみんなの為にサイトを編集してただけなのに…」
名剣らっちーはひとりごちた。
「どうしてこんな目に…」
彼にしてみればとんだとばっちりだ。
「こんな横暴なこと許されてたまるか!」
自分は恨みを買うようなことはしていない。だが、連中にそんなことが通用するだろうか。
主催の彼らとて、かつて横暴な仕打ちを受けた被害者なのだ。
出発からまもなく、スタート地点を大急ぎで離れる。
ガサッ…先にある繁みの奥、闇がざわめいた。
「誰だ!!」
手に持ったポピュラーなバタフライナイフを前に向ける。彼の支給武器だ。
「待ってください!僕です、彗夜です!」
闇に浮かび上がる強張った表情は、らっちーの顔を見て破顔した。
「彗夜君…」
「ああ、らっちーさんで良かった。らっちーさんなら信用できる」
敵意のないことを示す為か。両腕をあげ、ひらひらとさせた。
さらにくるりと一回転してみせる。
「不用心だな。もし僕がやる気だったらどうするんだい?」
そう言いつつも。らっちーはナイフを腰に収めた。
「らっちーさんなら信用できますから」
安堵の溜息をつきながら、歩み寄る。
「これから…どうする?」
それでも、彗夜を含む書き手のとばっちりを受けただけのらっちーは
憮然とした表情を崩すことはなかったが。
「生き残るに決まってるじゃないですか。早く帰らないと球技大会出られないですし」
「…といってもなぁ…ハカロワよろしく主催者に喧嘩売るかい?」
「それも悪くないですけど勝算薄いですよ…」
「ボクもこんな武器だからなぁ。心許ない」
腰に下げたバタフライナイフを見やる。
「彗夜君の武器は?」
「僕の武器はこれでしたよ」
らっちーの正面を向いて、
「ファイヤー」
おもむろに呟いた。
カチリ。小さな音と共に、闇夜が一瞬の内に真っ赤に染まった。
後に残るはおよそ人型をした消し炭と
「武器、いただきますね…。アチッ、結構コレ高温なんだなぁ…」
その消し炭からすすけたナイフを抜き取る彗夜の姿だった。
その胸部からわずかな白煙を昇らせて。
【名剣らっちー 死亡】
【残り35人】
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