火力こそ命






「……まったく、まさかこんなことになるなんてな」
セルゲイ(8番:男)は一人、森の中を歩いていた。
集められた書き手。現れた三人。ロワイアルの開始通告。NBC(17番:男)の死。
そのどれもが唐突であり、……だからこそ説得力があった。
なにしろ、そういった設定を組み上げたのも、彼ら書き手であったから。
「脱出方法は……あるんだろうか」
実際問題として、スタロワで数名、キャラロワでも7名の生き残りがいる。
(みつみENDはあえて思考の外に投げ捨てた)
その前例に倣えば、何かしらの脱出方法はあってしかるべきだろう。
……だが、そこまで考えて思い直す。
先ほどの国崎最高、折原えいえん、浩之ちゃんの三人の顔が目に浮かぶ。
「駄目だ……あいつらの顔、本気で怒ってたぞあれ」
見せ場のあったあいつらでさえあれなんだから、祐一や健太郎なんて……と、
そこまで考えたところで、彼は草むらに分け入って、適当なところで鞄を下ろす。
「とにかく、荷物を確かめるのが先だな」
そう、まずはそれからだ。

数秒間、周囲の物音を探ってから、ようやく彼は膝を曲げた。
片膝立ちの状態で、鞄のファスナーに手をかける。
「強力なやつか、でなければへっぽこなやつがいいな。閂&陣内みたいな」
そんなことを呟く。いやまったくあいつらは愛すべきバカヤロウだ――。
鞄の中から出てきたのは、お約束の水と食料、島の地図と。
大振りの、中華包丁が一本。
「……ひょっとしなくても、銃とかは、ないのかもなあ」
感想スレの『火器が出すぎで萎えた』という書き込みを思い起こしつつ。

あまりに地味なその武器を、左手で握り締めるセルゲイであった。



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