月明かり/廃工場






 月明かりを頼りにYELLOWはざわざわと、木々がざわめく森林を歩いていると、ある建物を発見した。
 YELLOWはゆっくりと慎重にその建物に近寄り、少しの間外でその様子を耳を立ててうかがった。物音も感じない、人の気配も無い。…多分。
 こんなところでこうやって時間を潰していても仕方ない。
 とりあえずオレに今必要なモノは武器なのだ。ここになら、何か武器になりそうなモノがころがっているかもしれない。
 入り口の扉は開かなかった。どうやら鍵がかかっているらしい。
(さて、どうすっかな?)
 考えても進入方法なんてひとつしか浮かばない。
「ひらけ、ゴマ!」
 とりあえず叫んでみるが当たり前で扉は開かない。
(しっかたねぇなぁ…)
 つぶやきながら手頃な位置にあるガラス窓に向かって蹴りを放つ。
 大きな音を立ててそのガラス窓は砕けちった。進入経路は確保された訳なのだが、ここまで大きな音が鳴るとは思ってなかったので、少し驚いた。誰かに聞かれたりしてねーだろうか?
 よいしょとその窓から廃工場の中へと進入する。
 その部屋は本当の意味で何もない部屋だった。六畳くらいの広さだろうか? そこに扉以外何一つ無い。その扉を出ると、そこには機械だのなんだのがたくさんゴロゴロとしていた。
 ここは…廃工場か。
 スイッチがあったので、それを押してみる。電灯が点いた。
 この島、電気は通っているのだろうか? いや、それはないだろう。
 主催者側がそんなサービスをしてくれる訳がない。
 ってことは、自家発電か。一応すぐに電気を消しておく。
 電灯をつけることはここを人にアピールすることになる。
 それは自分の身も危なくなるってこった。
 それにしても一体何を作ってる工場なんだ、ここは。よくわかんねー。
 まぁとにかく朝まで少し休憩して、明るくなってから何か探すとするか…。それにしても、ほかの奴らは一体なにやってんだろうか。そう考えながら、YELLOWは廃工場の中、小さな部屋の一室に入り、鍵をしめ、そこで少しの間睡眠をとることにした。

 目覚めは放送音だった。
 あーどうやらこのゲームに乗った奴らがいるみたいんだな。
 やれやれ、みんな仲良く脱出なんて方向に動くことにはもうならねぇか。
 それに24時間死者が出ないと首輪が爆発するようになってるようだし、3日という制限もあるしな。
 とりあえず武器探すか。殺し合いはできるだけしたくねーんだけどなぁ。



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