いつもここから。






「むう……どうしたもんか……」
「HEY! どうしましたシイ原さん」
「いや……いろいろ放棄したくなるから静かにしててくれ」
 お決まりのポーズで話しかけてくるダンディを、シイ原は疲れた声で一蹴した。
「にしても、ラジカセってなあ……ロワでは変な武器の奴が生き残る法則ってあるけど、俺知名度低いしなんかすぐ死にそうじゃん」
 とんとん、と、首輪を叩く。強固な素材で出来ているらしいそれは、容易に破壊できそうには無い。
「ゲッツ! ゲッツ! ゲッチュ!」
「うるさいなあ……ん」
 ダンディの首にもやはり巻かれた首輪を見て、シイ原はふとあることを思いついた。
「そーだダンディ。親友兼好敵手ってことに今決めてみたお前に頼みがあるんだが」
「HEY?」
「そこにうつぶせになるんだ。小一時間くらい」
「HEY!」
 言われた通り、腐葉土の上にうつぶせるダンディ。
(よしよし)
 シイ原はその上に馬乗りになると、ラジオからネジを外し、それをドライバ代わりにして首輪をいじり始めた。
「うむ……ここがこうなって……こっちのパーツがここと……ん? アレ? 元に戻らないな……えと、多分これが火薬とか入ってるとこで」
 もっともらしい表情で弄ってはいるが、実のところこういった知識など無い。彼は、死ぬのがダンディならまあいいやという鬼畜な発想の元動いていた。
「あれどうしよ、なんか部品余ってるし……てか、アレ? なんか緩くなってるな」
「HEY! どうしました?」
「いや気にするな。多分大丈夫だ少なくとも俺は。えーと。あ」
 かちり。
 首輪が、外れた。そして、何やら秒読みの如くかちかちと音を刻み始めた。

「…………」
 シイ原は、すっくと立ち上がった。
「ダンディ……俺達は戦友だ。例え二人に何があろうとな!」
「HEY! そう言って貰えると燃えてくるデース!」
「ああ! 俺は決めた。この腐った大会の主催者を、絶対に潰してやる!」
「私達は親友デース!」
「ああ忘れねえ。ダンディって大庭か野郎の名前をな……」
 そこまで言うと――
 くるりときびすを返し、シイ原は全力で駆けだした。
(すまねえダンディ! やっぱ首輪は一枚上手だったぜ!)
 直後――彼の後ろで轟音が鳴り響いた。
「ゲーーーーーーーーーーーーッツ!」
 見えはしなかったが、はっきりとビジョンが浮かんでいた。宙に舞い上がり、引き裂かれながらあのポーズを決めるダンディの勇姿が……。

【36番 ダンディ坂野 死亡】
【残り28人】




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