大暴走






彗夜(10番)は森の中闇雲に走っていた。
走っては息が切れて立ち止まり、辺りを見回して、また走る。
その行為が無為にして危険だということは分かっていた。
だが、愛しいあの人への思いが彼の足を駆り立てていた。
(会いたい・・・あの人に…守ってあげたい…)
あの出発点での頼りなげに震える少女の姿。その姿が胸を苦しくさせる。
君はいつでも遠かった。チャットでも数えるぐらいしか会話できなくて、
僕はいつでも見るだけだった。
でも、今は違う。こんなに近くにいる、触れることができる。
そう、僕だけがあの人を守ってあげられる。
マイエンジェル、マイハニー。君のためだったら何でもできる。
君の為にならこの島の奴らみんな殺してやったっていい。
彼はありったけの大声で熱い胸の内をぶちまけた。
「愛してるよ!!。嬢ーーーーっ!!!!!」




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