仮面ライダーVS怪人ブレストファイヤー






「仮面…ライダー?」
(つったら、アレだよな?なんで、そのライダーが…?いや、葉鍵のキャラが実際に居るんだから、ライダーくらい…くそっ、肋骨がイったか…痛くてまともに考えられねぇ)
男の自己紹介に錯乱するL.A.R.を尻目に、立ち上がってきた彗夜と男…ライダーは対峙した
「効いたよ、今のキックは……けど、仮面ライダー?フザけるのもいい加減にしてほしいねぇ」
「ふざけてなどいない…俺は、仮面ライダー!!」
ライダーの言葉に、彗夜はあきれたように肩をすくめ
「…『。』嬢、こいつら、みんな殺すよ…それを嬢も望むよねぇ…?」
かちり、と音がし、三たび彗夜の胸から炎が吹き出す
それを、ライダーは上に跳躍して木の枝を掴み、懸垂の要領で体をその上に押し上げることでかわす
「いくぞっ!!」
その勢いを殺さず前転のように体を回し、その回転力と両腕の力だけで体を押し出し、彗夜へ向かい飛び、ライダーはまるで本当の特撮のように空中で一回転し、腕を振り上げる
形状のせいで加熱しやすく誘爆をふせぐための放射の停止と、火炎放射の衝撃に空く一瞬の隙、思い込みで肉体の限界を超えているライダーが接近するにはそれだけで十分だった
「おぉぉぉぉぉっ!!ライダーチョォォォップ!!!」
脳天めがけて振り下ろされた手刀は、その一撃で彗夜を昏倒させる…ハズだった
だが、ずぶり、という肉が切れるイヤな音とともに、ライダーの腕から赤いものが吹き出した
チョップの軌道の先に、彗夜がバタフライナイフを突き出して、それで攻撃を受け止めたのだ
「バカだねぇ、素手でかかってくるなんて」
ライダーの腕に刺したナイフを、ぐり、とひねり傷口を抉る
「ぐぅぅぅっ!!!」
ぼたぼたと鮮血が滴り、ライダーが苦痛の声をあげる

「君もう、死になよ………!?」
ナイフを引き抜こうと、腕を引いた彗夜の動きが止まる
「ライダーは…この程度では倒れんっ!!!」
追い詰められているはずのライダーの眼が、ぎん、と不屈の闘志に燃え上がり彗夜を睨み付けていた
腰に下げた電極ナックルを左手に握り締め、傷が抉れるのもかまわず腕を振りかぶり
「ライダー!!パァァァァァンチ!!!」
手にはめた電極ナックルがぱちぱちと放電する音をたてて空を切り、彗夜の胸に叩きこまれた
「ごべぁっ!!!」
ライダーの全力を込めた拳の一撃に彗夜の体が吹き飛び…
一瞬のタイムラグの後……彗夜の胸の火炎放射器が燃料の誘爆で火を噴く
「ぎゃぁぁぁぁっ!!!!!あつい、あついぃぃぃぃぃっ!!!」
マナーとの戦いで無駄に連打して燃料を浪費していたのが幸いしたのか、爆発はそれほど大きいものではなかった
…が、その爆発で彗夜の唇は焼け、鼻は折れ曲がり、頬の肉は削げ、その元は端正だった顔は、常人では直視できないほどヒドいものになっていた
「はぁ、はぁ……く…っ!!」
そして、その一撃を最後にライダーもがくりと膝を付いた
ライダーだという思い込みが後押しをして動いていた体も、その限界を超えた運動量に耐え切れなくなったのだ

「み、みず…みずぅぅぅぅっ!!」
焼けた顔を庇う様に無様に這い逃げる彗夜
「野郎、逃げやが…ぐっ!!」
L.A.R.が追おうとして、激痛に体を曲げる。満身創痍の二人は、逃げる彗夜の後姿を見送るしかなかった
「……とりあえず、助かったのか…?」
体を木の幹にもたれさせながら、L.A.R.が呟く
「ありがとよ…アンタ、腕平気か?」
「ああ、この程度、ライダーにとってはカスリ傷だ」
言いながら、ライダーは、びぃ、と服の袖を破り傷口に強く巻きつける
しかし、それはどう見てもとりあえずの応急手当にしかならない
ライダーやL.A.R.の傷を軽い手当てのまま放置し、不衛生なこの島で行動するのは非常に危険なのは明らかだった
「いったん、どこかの家に隠れようぜ…俺も、怪我の手当てがしたいしな…」
「…うむ、そうだな…君、名前は?」
「L.A.R.って名乗ってる。アンタは?」
「俺は…仮面ライダーだ」
(多分)真顔でライダーは答える
「いや、そうじゃなくて名前を聞いてるんだが…まあいいか。とりあえず、肩貸してくれねえか?」
「ああ…わかった」
ライダーがL.A.R.に手を貸し立ち上がらせ、お互いが支えあうように歩き始める
二人は、肩を貸しあいながら市街への道を進んでいった
【L.A.R.&ライダー、手当てのために『。』に見つからないよう市街地へ戻る】



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