毒物






「私の支給武器は、これなんです・・・」
 申し訳なさそうに目の前の少女(牧部なつみ)は薬瓶を取り出した。
 古茶けていて濁った色の瓶。 中には白い粉が入っている。
「こんなの持っていたら、誰も私と一緒に居てくれませんよね・・・」
「・・・毒薬なの?」
「わかりません。 でも、いかにも怪しいですし・・・」
「ふふっ」
 私は思わず笑みをこぼした。
「ど、どうしたんですか、牧村さん?」
「だって、私の支給品だって・・・」
 ポケットから小箱を取り出し、机の上に置く。
「注射器、ですね」
「私も、このアンプルに何が入っているのかはかは分からないんだけどね」

 民家の中で複雑な笑顔を交わす二人。
 座り込んでぼんやりとしているなつみを見つけた南が声を掛けたところから、この二人は一緒に行動している。
「ま、まあ、必ず毒ってわけでもないんですし」
「試しに飲んでみるわけにもいかないしね」
 ちょっと打ち解けた顔で微笑み合う。
「まあ、使わないに越したことはないでしょうね」
 なつみは、南が淹れたコーヒーを口に運ぶ。
「ふふっ、そうね」
 南もまた、なつみにつられるようにコーヒーを口にした。
 そして、二人は同時に倒れ込んだ。

 数時間後。 彼女はむっくりと起き上がり、相手を確認する。
「・・・死んでいるみたいね 私が飲んだのは睡眠薬、かな」
 放置された小瓶と小箱、それに相手の食料等を鞄にしまい込む。
「相手も薬物を持っていたとはねぇ。 考えてなかったなー」
 彼女はちょこっと複雑な笑みを浮かべ、そのまま明るい日差しの元へと出ていった。

【牧部なつみ 死亡】
【残り47人】




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