某山の殺人鬼






 ふと隣りを見ると、初音が眠っていた。
 やっぱり疲れているんだな〜と思い、眠らせておくことにする。

 ---あれから住宅地を離れ、山に入った。
 視界が悪い森は避け、岩場を散策し、身を隠せそうな場所を見つけた。
 その頃には千鶴姉ぇの体力も限界っぽかったから、あたしと初音で見張りをするからと言って、休ませることにした。
 千鶴姉ぇの隣りでは、ちゃっかり楓も眠っている。

 ・・・今日は月が綺麗だ。
 この場所があまりにも静かだったので、自分の置かれている状況を忘れたくなる・・・が。
 ぼんやりと月を眺めていた目の端に、動くものを捉えてしまった。

 相手は一人のようだ。 それも、小柄で髪が長い少女のようである。
 いきなり現れたところをみると、あの近くに洞窟でもあるのだろうか?
 幸い、こちらに気付いている様子はない。
「さて、どうしようかな」
「・・・梓姉さん?」
 唐突に声を掛けられて、危うく声を出しそうになった。
 上体を起こし、不思議そうにこちらを見つめる楓に、静かにするように身振りで伝える。
 一端楓に近寄り、人が居る事を伝え、いつでも移動できる準備をするように指示する。

 そして相手の様子を見ようと顔を出すと・・・
 銃を掲げた少女の真っ赤な目が、あたしを真っ直ぐに射抜いていた。



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