薄明るい空の下、彼女の声が聞こえない
「これだ……」
倒れた真琴の持っている盗聴器を、舞は強引に奪った。
「これ、何かな?」
「……みさき、知らなかった?」
「うん。わたしこの子の持ってるお菓子目当てだと思ったよ」
「そう。これは多分盗聴器だと思う。これを使えば……」
焦らずに、だけど急いで操作する。あの声を聞き間違えるはずはない。追いかける前に聞こえた声は、間違いなく――
「私の番号は17」
言いながら盗聴器の番号を17に合わせる。
「よく覚えてるね。だったら、わたしは18かな。川澄舞って、わたしの前に呼ばれた名前だったから」
「そうなの?」
18に合わせる。確かに自分達の会話がイヤホンから聞こえる。続いて19番。
「19も、この会話が入ってる。だから、ここで寝てる二人のうちどちらかは19番か」
『君をスパイさん一号に任命するよ〜』『はわわ〜っ、待ってくださいよ〜』
20番も違っていた。川澄舞と倉田佐祐理。番号はそう離れてはいないはず。もうすぐのはずなのに。
21番――無音。22番――無音。
佐祐理は一体どこにいるんだろう。落ち着かないといけないのに、気持ちが段々と先走る。
薄明るい空の下、彼女の声が聞こえない。
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