スケブ
ここに居る全員が、抑揚の無い声で、不気味な言葉を吐き出している。
私は、隣に居る先輩を見た。
彼女は全く現状が把握出来ていないみたいだった。当然だろう。
彼女は、モニターに映ったあの人も、かつて雪見先輩だったモノも見ていないのだから。
「そこっ! 声が出ていないぞ!」
ひっ---! 男の人が寄ってくる!
私は、どうする事も出来ずに、ただ震えながら先輩の袖を握った。
彼女はこちらに顔を向けた。理解してくれたらしい。
「すみません、この娘、声が出せないんです・・・・」
「ああ、お前が上月か。聞いている。」
殺されずに済んだ・・・殺されずに済んだ・・・
「じゃ、そのスケブに30回、今の言葉を書け。」
私は命令されるままに、ただ手だけを動かした。
『私達は、殺し合いを、する』『私達は、殺し合いを、する』『私達は、殺し合いを、する』・・・・・
「---上等。」
男の人は教壇に戻った。殺されずに済んだ・・・
未だに動転は収まらない。ただ、
---スケッチブック、汚れちゃった・・・---
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そんな気が、した。
【深山雪見 死亡】
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