それぞれの想い人






 ナンデ…。
 全てはこの言葉に集約される。
 藍原瑞穂は泣いていた。

  ――時は5分巻き戻る――

  「香奈子ちゃん!」
 瑞穂は繁みから飛び出す。
 建物から出てきたのは太田香奈子。彼女の親友。
 50音順に部屋を出されたのですぐに合流できると分かっていた。
「瑞穂…」
「香奈子ちゃん…どうしたらいいの…。わかんないよ!」
 涙目になりながらすがりつく。
 狂気の世界に放り出された自分を抑えられない。
 泣いた時慰めてくれるのは祐介と香奈子。
 だが…。
――トン…――
「え……」
 香奈子は瑞穂を突き放す。
「ごめんね…瑞穂…」
 目をそらしながら言った。
「瑞穂たとわたしじゃ助ける人が違うから…。わたしは月島先輩を助けるから…」
 香奈子はその場から駆けだす。
「香奈子ちゃん!」
 最後。一瞬立ち止まって彼女は言った。
「瑞穂……。いつかはあなたも殺さなくちゃいけないのかな…」

   ナンデ…。



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