ガールズ ドント クライ
一体何が起こったのか理解できなかった。瑞佳の袖口と手に少し赤黒い血がついている。
私に覆い被さるように倒れている、背中から小刀の柄を生やした少女は苦しそうに何か呻いた。
「 ……」
瑞佳が何か呟いたけど聞こえなかった。
あたしは彼女の下から素早く立ち上がって刀を拾って、そして――
彼女の背中に、知識として知っている心臓の位置らしき所へ、はっきりと
刀を突き刺した。
刃が人の体に埋まっていくこの感覚をあたしは一生忘れないだろう。
そのまま私は瑞佳のそばにいき肩を掴んで強引に抱き寄せた。
「大丈夫、殺したのはあたし。瑞佳じゃないわ」
瑞佳は何かを思い詰めた様な顔であたしにしがみついていた。
あたしはそんな瑞佳の頭をやさしく撫でた。
「大丈夫、大丈夫だから……」
はやくここから離れよう。
立川郁美は見た。
ようやく見つけた自分以外の人。
それだけでもう救われた様な安堵感が胸に広がった。
がしかし彼女が目にしたのはちょうど長森瑞佳が新城沙織を後ろから突き刺す瞬間だった。
しかもその後もう一人の青い髪の少女は倒れている赤い髪の少女に躊躇無くとどめを刺した。
そう、この島では今殺し合いが行われているのだ。
突きつけられる現実を前にその場にぺたりと座り込んでしまう。
全身の震えが止まらない。今のも涙がこぼれそうだ。
向こうの二人がまだこちらに気が付いていないのだけが救いだった。
郁美は叫び出したくなる口をいつまでも震えが収まらない手で一生懸命押さえながらほとんど這うようにしてその場から離れた。
【新城沙織 死亡】
【残り53人】
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