深く静かに観察せよ
彼女ら柏木4姉妹は揃って小屋を脱出した。
近く。非常に近くから耳に届く争う音。
構ってはいられないというのが4人の総意。
それは考えるまでもないこと。
彼女らは今、違うことを考えなければならない。
いつ他の3人を裏切るか。
それは考えたくないこと。でも考えなければならないこと。
他の3人は今は考えていない。
でも1人だけ考えている女性がいた。
「柏木耕一という男を独占すること」は、日常ではかなわなかった。
でも今はある意味合法的に奪える。
3人の姉妹を失うことはひどく寂しいことだけど、結局女性は1人しか生き残れない。
なら必至に生き残って彼を一人占めにする人生が最良。
夢を追わず現実を見て出した結論。
脱出なんて夢。
彼女はすぅっと目を細める。それを次の瞬間自覚した。
ああ、裏切りの一歩。
その目で3人を観察する。
数日後にはもう会えなくなるであろう姉妹。
目に焼き付けておくためではない。
殺す機会を考えるためにと観察した。
観察者の名は……。
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