正常なひと






「ああ、つまり、魔法を使わなきゃいいのね」
 リアンにヘルプを送ろうと、何度もチャレンジしていたスフィーは、縮んでしまった自分の体を見て一人ごちた。
「うー、元に戻るまで、どれくらい掛かるかなぁ・・・」 と、ぼやいた時、この建物に近寄ってくる二人組みに気付いた。
「あの女の子たち、こっちに来る・・・」

 侵入してきた二人組みは、のほほんとした雰囲気でくつろぎ始めている。 2階に隠れて様子を窺っていたスフィーだったが、危険は無いと判断し、二人の前に姿を現した。
「あのー・・・」 瞬間、二人の顔に緊張が走ったが、相手が子供だと見て警戒を緩めた。
「あれ? 校舎では見なかった娘ね? キミ、どうしてこんなところに居るの?」
 赤い髪の少女、高瀬瑞希は、スフィーを島の住民だと勘違いしているようだ。
「え? あたしも参加者だけど・・・? 名前はスフィーです」
「何言ってるの? スフィーって人は私の前の前に出て行ったけど、大人の女性だったわよ?」
「あ、それはあたし。 魔法使ったから体が・・・」
 そこでスフィーは言葉を止める。 果たして本当の事を言って、信じてもらえるものか?
「魔法・・・?」 「え? なに? あなた魔法使いなの? 何? どんな事が出来るの?」
 青髪の娘の反応が良いが、真面目そうな赤髪の少女はやはり訝しげな顔をする。
「えーっと、今は首輪のせいで魔法は使えなくて。 でも、さっき無理に使ったせいで体が縮んじゃったんです」
「そうなんだ〜? でもさ、体が縮んじゃうってところも見てみたいなぁ〜」
 玲子の注文に、スフィーはちょっと考え込む。 別に証明してみせたところで何かが好転するとは思えない。
「あ、無理なお願いだったかな〜?」
 玲子の一言が、ちょっと癇に障る。 どうやら、彼女も本心からは信じてはいないようだ。
「・・・わかりました」 何故ムキになったのかはよく分からない。 精神年齢が下がっているせいなのか。
「・・・え? ええ〜!?」 「何よ・・・何なのよ・・」
 ほのかに光を発し、多少縮んでいくスフィーを見て、驚嘆の声を上げる二人。
 ふふん♪ と、ちょっと自慢げなスフィーだったが、返ってきた言葉はショックなものだった。
「化け物・・・」



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