彼女の持ち物は






「はい。 舞ちゃんにもおすそ分けだよ」
 みさきがバナナを手渡してくれる。
「・・・みさき。このバナナには、毒が入ってる」
 げふっ! ・・・ごくっ。 みさきが吐きかけたバナナを飲み込む。 流石だ。
「・・・可能性があるから、そんなに食べないほうがいい」
「ひどいよ〜」

 私たちは、それぞれの探しものを求めて建物から離れた。 近くで争いごとをしている気配はない、が。
「・・・みさき、ちょっと静かに」
 みさきも気付いたらしい。 人の声。
『ザッけんたろ・・・ザッそれで、楓は・・・ザッ ちょちょ、ちょっとタンマ〜!・・・』
(・・・話し声じゃ、ない?)
 その声は、すぐ近くの草陰から聞こえてくる。 私はみさきに「ここを動くな」と指示しようとした。
「みさき、ここを」 「『ザッみさき、ここを・・・』 あうぅぅ〜」
 今のは、私の声? もう少し聞き耳を立てる。
「あううぅ〜、どうやったら止まるのよぅ!? 『ザッあーっ、繭ちゃん、こんなところに・・・』」
 私は跳び出した。

「・・・お前。 今の声は・・・」
 ・・・ちょっと声に怒気がこもってしまったか。
 機械とイヤホンを両手に持った少女は、奇声を上げながら一目散に逃げ去ってしまった。
 気配を察して、みさきも近寄ってくる。
「みさき、あの子が持っていたのは、恐らく・・・」
「うん。 間違いないと思うよ」
 私達は、あの子を追いかける事にした。
(佐祐理・・・生きてた)
(この臭いは、絶対にバウムクーヘンと麦チョコだね。 お菓子、わけてもらえるかな?)

【川澄舞】   佐祐理ゲージMAX
【川名みさき】 空腹ゲージ8分目



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